プロフィール
早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問/一橋大学名誉教授 野口 悠紀雄
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。

○主な著書
「日本経済入門」
「ブロックチェーン革命」
「仮想通貨革命」などがある

Sansan株式会社 マーケティング部 戦略企画チーム マネジャー 柿崎 充
慶應義塾大学在学中の2000年にベンチャー企業の設立に参加。その後、2003年にベンチャー企業を設立、経営者を経て、2006年外資系コンサルティングファームのプライスウォーターハウスクーパース(旧ベリングポイント)入社。 グローバル経営戦略調査、グループ経営管理態勢構築、金融機関のシステム・セキュリティ監査、内部統制強化支援、IR・統合報告支援などに幅広く従事。 2013年よりSansanに入社し、2016年6月より現職。 Sansanでは、入社後は経営管理部のメンバーとして、社内システムのクラウド化などに従事。その後、エンタープライズ領域のマーケティング責任者として、大規模案件を中心とする受注に成功。

【対 談】野口 悠紀雄 氏 × Sansan株式会社

組織に囚われない働き方を探ることが重要

柿崎氏:世間一般で”働き方改革”が話題になっていますが、野口先生はどのようにお考えですか?

野口氏:先般、政府が働き方改革に関する実行計画を出しましたが、そこで大前提になっているのが”組織の中での働き方”です。 労働時間を柔軟にすることや、正規社員と非正規社員の区別をなくすなど、従来の働き方を前提としています。 私は、ITの進展によって”組織として働くことに囚われないカタチ”の働き方が重要だと考えています。 実行計画にも、兼業・副業を認めると書いてあるが、組織に雇われながら片手間でやるのも勿論良いと思いますが、 もっと積極的に働くカタチの可能性を探るべきだと考えています。

日本は、言語で壁が作られている

柿崎氏:例えば、クラウドソーシングという働き方が少し前から日本でも話題になりましたよね?

野口氏:クラウドソーシングは、(仕事の種類にもよるが)低賃金に陥りやすいです。例えばライターの仕事です。 仕事を依頼すると依頼先が多いため、厳しい条件が設定され結果的に報酬が低くなります。 クラウドソーシングには”国境がない”ため、言語が英語の依頼になるとインドが依頼先に入ることになります。 そうなると、インド人は低賃金で依頼を請け負うため報酬が
かなり下がります。 これはクラウドソーシングに限らず、1990年代からアメリカの企業がインド人をメインにアウトソーシングして 賃金が下がったのと同様になります。 日本のクラウドソーシングは、日本語が特殊な言語なため世界の価格競争からは守られています。

日本は、企業の中だけで完結させようとする文化をもっとオープンに変えるべき

柿崎氏:アメリカのシリコンバレーでは”国境がない”多様性のもとで繁栄しています。 生産性が高く、創造的なサービスを続々と世に輩出していますが、 トランプ政権になりシリコンバレーが衰退すると危惧されていますよね?

野口氏:トランプ政権は、移民や外国人労働者に制約的な姿勢をとっています。 シリコンバレーの外国人労働者の比率は大きく占めています。 特にインド人や中国人の功績は、非常に大きいです。 従って、ビザの規制など制約的な施策を取ることは、シリコンバレーにとってはかなりの痛手になるはずです。 多様性の功績は、とても大きいのです。

柿崎氏:日本の場合、多様性というと”女性の登用”の論点になりがちですが、 日本企業がもっと注力すべき点はありますか?

野口氏:国際的な多様性を求めるのは難しいです。 日本は、言葉の壁があるので国内だけの労働思考になりがちです。 言葉の問題以外にも、日本は企業や組織が閉鎖的な性格を持っています。 企業の中だけで組織を作ったり、管理しようとします。 技術開発も企業の中だけで行い、外に出さず機密に実施する文化です。 異質のものを取りいれて新しいモノを生みだすことに慣れていません。 従って、企業の壁を破ってオープンな姿勢を取り入れることが大事です。 つまり、オープンイノベーションの考え方が必要になります。 技術開発をひとつの企業だけでやるのではなく、企業の外のリソースをうまく取り入れる。 日本企業がオープンな姿勢をとり、多様性を確保することが今後重要になると思います。

オープンイノベーションが働き方を大きく変える

柿崎氏:わたしたちは、個人の名刺管理『Eight』と法人向けの名刺管理『Sansan』という2つのサービスを扱っています。 法人向け名刺管理サービス『Sansan』では、オープンイノベーションで使われるケースが増えています。 特にグローバル関連の部署やR&Dの方の利用が増えています。 やはり、生産性が高い人材は外のリソースをうまく活用しているケースが見られています。

野口氏:社内だけでなく、外にいる人材を把握してリソースを活用するのは、面白いサービスですね。 ビジネスに重要な機会を得られるしくみだと思います。

柿崎氏:『Sansan』を導入した某大手出版社様は、競合のAmazonのkindleなど、 海外サービスがプラットフォームとして攻めてきたときに、あっという間に全社員でオープンイノベーション を始めました。危機感があったからこそ出来た判断だと思います。

野口氏:ITの分野ではオープンイノベーションが進んでいます。身近な例でいうとGoogle Mapもプラットフォームです。 無料で提供して色んな新しいサービスと連携していくオープンイノベーションです。 オープンに提供されるリソースを使って、新しい可能性を探っていくことはこれまでも行われてきたことです。 そして、仮想通貨も大きく可能性を感じます。個人ベースで外部のリソースを利用できるのです。 従来の銀行システムでは、少額の送金が困難です。 それが、ビットコインのような仮想通貨を使うことで非常に簡単に低コストでできるようになりました。 仮想通貨は、オープンイノベーションや企業が外に向く機会になります。 そして、国外国内問わず大きな役割を担います。 相手の口座を知らないと送れない、送金するためにわざわざATMに行かないといけない等、面倒な手続きが必要でした。 仮想通貨は、それらを簡素化できます。

柿崎氏:仮想通貨は、アフリカや東南アジアは、銀行の支店がないので進展が早いと言われていますよね?

野口氏:携帯電話を用いる電子マネーは、既に拡がっています。 ケニアは、ボーダフォンの電子マネーが急速に普及しました。銀行の支店もないし、都市を離れると送金もできません。 1日かけて支店に行く環境でしたので、電子マネーで送金が非常に簡単にできるようになりました。 仮想通貨が拡がると、さらに便利さが向上します。 海外での送金システムは、現在は非常に高いのですが仮想通貨は低コストになります。 東南アジアでは、既にその拡がりの効果を顕著に見せています。 フィリピンから香港に出稼ぎに行った人が、香港からフィリピンに送金する仮想通貨で送金するサービスが 既にいくつも存在します。そして、出稼ぎが簡単にできるようになり働き方を変えました。 その他にも、アメリカの企業がフィリピンにいる労働者にビットコインで支払うサービスがあります。 そうするとアメリカの企業がフィリピンの労働者にアウトソースして報酬を支払うことが簡単にできるようになります。 日本だと、未だビットコインで支払うサービスはほとんど存在しません。 日本はドル、あるいは開発途上国のペソなどになります。 この点では、日本は世界の潮流から著しく遅れています。

柿崎氏:ビットコインの元になっているブロックチェーンという技術も既に海外だと企業間で連携して実験していますよね?

野口氏:仰る通り、すでに国際的な協力も色々な国で行われています。 本来、ブロックチェーンにも仮想通貨にも国境がありません。 通貨について、日本でサービスがないのは、規制の問題が大きいことが上げられます。

柿崎氏:最近では、日本の企業でもブロックチェーンに真剣に取り組む企業が増えてきましたよね?

野口氏:現在は、金融を中心として増えてきています。特に銀行が独自の仮想通貨をつくる動きがあります。 2018年には、メガバンクが独自の仮想通貨を始めるはずです。証券の取引も顕著に動きを見せています。

外の出会いを積極的に組織の資産に変える分散型の働き方

柿崎氏:法人向け名刺管理サービス『Sansan』では、社外の人との出会い(人脈)や情報を可視化して、共有できることが 評価されています。いわゆる、分散型の働き方になるきっかけを提供しています。

野口氏:海外の事例でFacebook上でみんなで選挙に行こう!という運動がありました。 写真付きの自分の友人からの誘いがあったときに大きな影響力があったという実験の結果が出ました。 ソーシャルネットワークで、知らない人からの呼びかけのメッセージと、知っている人からのメッセージでは大きな違いが見えました。 これは、出会いの重要性を表しているのではないかと思います。

柿崎氏:なるほど。日本の固有の文化として”名刺交換”があります。対面での交流がある人物からの呼びかけが重要という意味では、 とても共感が出来ますし、名刺はプラットフォームに成るのではないかと考えています。

野口氏:名刺の歴史は古いです。1960年代にわたしがアメリカに留学していたとき、アメリカ人は、みんな名刺を使っていませんでした。 ところが80年代は名刺(ビジネスカード)を使うようになっていました。これは、日本人が広げた功績なのだと思います。 アメリカ人が名刺の効用を認めたということでしょう。 わたしが、もっとも『Sansan』を評価している点は、名刺を自動的に最新の情報に更新してくれることです。 名刺の情報は、2,3年で陳腐化します。名刺をリスト化してきれいにデータベース化したときには既に情報が古いのです。 部署も役職も変わりますし、転勤や転職もありえます。 昔、秘書にお願いして名刺をリスト化してもらいましたが、電話も繋がらなくて使えなかった記憶があります(笑) 日本企業は、一人当たりの労働生産性が低いことに課題があります。 ブロックチェーンやロボット、AIにより、単純労働の多くは整理されていくでしょう。 これからの日本企業の働き方は、やりたい仕事や、もっと創造的な仕事に専念していくことが重要です。

柿崎氏:わたしたちのサービスは、名刺情報をデータ化する名刺管理のサービスだけだと思われがちですが、 日本企業の労働生産性を上げるITツールの代表として『Sansan』の価値をしっかりと届けていけたらと思います。

本日は、貴重なお時間を頂きありがとうございました。

【日本企業の少し未来の働き方セミナーについて】
FinTechの最新情報や、わたしたちの働き方がどのように変化を起こす可能性があるのかなど野口 悠紀雄先生に目の前でご講演いただきます。
毎回、満足度が非常に高いセミナーとなっております。ご当選者様のご来場お待ちしております。

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