従来、企業やその他の組織においては、「個人の属性や識別子をデジタル情報として扱うことで、本人にサービスを便利に使わせよう」、あるいは、「商流分析やターゲティング広告によって、ビジネスの利益を上げよう」という流れがありました。このようないわば“中央集権的”なIDの管理法に対して、いま、ユーザが自身のアイデンティティを完全に管理する「自己主権型アイデンティティ/Self-Sovereign Identity (SSI)」という大きなうねりが起きつつあります。
この SSI の体系の中において、個人や組織を識別する識別子が「DID (Decentralized Identifier)」です。SSI/DIDを用いれば、たとえば、「難民にデジタルIDを付与して社会生活を送りやすく」したり、「大学が将来廃校になったとしても、有効(証明可能)な卒業証明書や成績証明書を発行できる」ようになります。
またデジタル庁の創設に象徴されるように、社会全体のDX (デジタルトランスフォーメーション) は加速しています。またマイナンバーの活用拡大もデジタル庁を中心に模索されつつあり、「2030年にマイナンバーはどうなって(管理されて)いるのか?」も、気になるところです。そうした環境の中、このセッションでは、ともすれば関心が薄れがちな「ID」の管理に関して、一石を投じ取り上げます。まず「SSI/DIDとその関連技術や応用をめぐる現状」を解説し、ついで「社会のDXが進んでいく中での、個人や組織のデジタルなアイデンティティの望ましい扱い方」や「そのためのトラストの基盤」について、参加者のみなさんとともに考えます。
<要旨>
・分散型ID (DID)/検証可能な属性証明 (VC : Verifiable Credential) の実証実験の紹介を通し、何ができるかを解説
・SSI/DID や VC をめぐる技術の標準化動向
・自己主権型アイデンティティがもたらす経済の転換