「分断」の対極にある概念は、「包摂」である。異なる背景を持つ者同士が平和な関係性を構築するには、多様性の包摂が欠かせない。しかし現代の日本は、まだ「多様性を包摂する社会」であるとは言いがたい。日本では男女雇用機会均等法や女性活躍推進法が施行されてきたが、例えば男女の働き方にはまだギャップが存在し、経営層や国会議員に占める女性の割合は著しく低い。またLGBTの方々への制度的・社会的な理解は十分とは言えず、外国人の住みやすさや仕事環境には課題が多い。障がい者の方々の活躍の機会もまだまだ多くはない。経済格差をはじめ、教育、地域、世代などの格差により、自らの潜在力を社会の中で発揮し切れていない方々も多い。しかし、多様性と包摂性のない社会は単一思考に陥りやすく、社会の創造性が引き出されなくなる。経済のエコシスエムにおける単一思考は、経済成長の機会を著しく奪うことになる。一人ひとりには創造性があり、多様な個人が集まれば社会の創造性は飛躍的に増す。ラベリングを外し、多様性の中で個として力を発揮できる社会の構築が、経済のさらなる発展には欠かせない。日本経済に「多様性の包摂」を定着させるとともに、格差や分断を修復して活力と創造性をもたらすにはどう取り組んだらよいか。一人ひとりの「マインド・チェンジ」にも焦点を当てながら、その方策を考える。