斉藤賢爾氏
早稲田大学大学院
経営管理研究科 教授
1993年、コーネル大学より工学修士号(コンピュータサイエンス)を取得。 2006年、デジタル通貨の研究で慶應義塾大学より博士号(政策・メディア)を取得。同大学院政策・メディア研究科 特任講師等を経て、2019年9月より早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授。 また、2016年より株式会社ブロックチェーンハブ CSO (Chief Science Officer)。 一般社団法人ビヨンドブロックチェーン代表理事。一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事。 一般社団法人自律分散社会フォーラム副代表理事。 慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科 講師(非常勤)。
Interop Tokyo カンファレンス 2021
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斉藤賢爾 氏
早稲田大学大学院
経営管理研究科 教授
アイデンティティの主権を取り戻せ ~分散型ID (DID) 関連技術とトラスト基盤のゆくえ~
従来、企業やその他の組織においては、「個人の属性や識別子をデジタル情報として扱うことで、本人にサービスを便利に使わせよう」、あるいは、「商流分析やターゲティング広告によって、ビジネスの利益を上げよう」という流れがありました。このようないわば“中央集権的”なIDの管理法に対して、いま、ユーザが自身のアイデンティティを完全に管理する「自己主権型アイデンティティ/Self-Sovereign Identity (SSI)」という大きなうねりが起きつつあります。
この SSI の体系の中において、個人や組織を識別する識別子が「DID (Decentralized Identifier)」です。SSI/DIDを用いれば、たとえば、「難民にデジタルIDを付与して社会生活を送りやすく」したり、「大学が将来廃校になったとしても、有効(証明可能)な卒業証明書や成績証明書を発行できる」ようになります。
またデジタル庁の創設に象徴されるように、社会全体のDX (デジタルトランスフォーメーション) は加速しています。またマイナンバーの活用拡大もデジタル庁を中心に模索されつつあり、「2030年にマイナンバーはどうなって(管理されて)いるのか?」も、気になるところです。そうした環境の中、このセッションでは、ともすれば関心が薄れがちな「ID」の管理に関して、一石を投じ取り上げます。まず「SSI/DIDとその関連技術や応用をめぐる現状」を解説し、ついで「社会のDXが進んでいく中での、個人や組織のデジタルなアイデンティティの望ましい扱い方」や「そのためのトラストの基盤」について、参加者のみなさんとともに考えます。
<要旨>
・分散型ID (DID)/検証可能な属性証明 (VC : Verifiable Credential) の実証実験の紹介を通し、何ができるかを解説
・SSI/DID や VC をめぐる技術の標準化動向
・自己主権型アイデンティティがもたらす経済の転換
Interop Tokyo カンファレンス 2021
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斉藤賢爾 氏
早稲田大学大学院
経営管理研究科 教授
学びと教育のデジタルシフト ~Beyond GIGAスクール~
2020年、新型コロナウイルスによる感染症拡大への対策として、小学校や中学校が臨時休校となり、大学のキャンパスも閉鎖される措置がとられ、多くの授業がオンライン化するなど、我が国の教育環境をめぐる大きな変化が訪れました。ところが、授業をオンラインで実施することには根強い反対もあり、多くの大学では対面授業の再開に向けた揺り戻しが起きています。
一方、『GIGAスクール構想』のもと、小中学校等の児童生徒に1人1台の端末と高速インターネット環境を提供・整備する施策が進んでいます。さらには補助金を伴う『EdTech』の試験導入や、『STEAM教育』※への大きな期待も道筋が見えており、それらはGIGAスクール市場を超える巨大産業に発展する兆しすらあります。しかし、授業をオンライン化するだけでも大騒ぎとなる中、ハードウェア・ネットワーク・アプリケーションが提供されたくらいで我が国の教育をめぐる状況は本当に改善するのでしょうか。
本セッションでは、当事者、研究者、政策担当者など、さまざまな視点から「我が国の学びと教育のデジタルシフト」をめぐる課題・論点を明らかにし、社会のDX (デジタルトランスフォーメーション) の要となる「教育環境の変化」について、参加者のみなさんとともに考えます。
※:STEAM教育:Science、Technology、Engineering、Art、Mathematicsを、実社会での問題発見・解決に活かしていくための、教科横断的な教育
<要旨>
・社会のDXの要となる学びと教育のデジタルシフトの現状、政策と実践を概観
・GIGAスクール時代のICT活用、その課題は?
・EdTechの導入・STEAM教育の実現にむけて
・10年先、そして30年後を見据え、こどもたち、そして私たち自身は何をどう学ぶのか
Interop Tokyo カンファレンス 2022
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斉藤賢爾 氏
早稲田大学
大学院経営管理研究科
教授
NFT(非代替性トークン)、DeFi(分散金融) の虚像と実像
ブロックチェーン上のアプリケーションプログラムであり、「実行されるプログラムコードとその実行パラメータおよび実行結果」を誰もが確認できる特徴をもつ「スマートコントラクト」が、非中央集権的な世界をもたらす “Web3” の基盤となる技術として、社会に様々な変化を起こしつつあります。
NFT (Non Fungible Token、非代替性トークン) は、座席指定のチケットなどのかたちで概念的には昔から存在していましたが、スマートコントラクトによって発行や移転が賄えるようになったことを通して、最近にわかに注目を浴びています。多くの人々はこれを「唯一性を保証するもの」だと考えているようで、とくにアート作品をトークン化した “NFTアート” が盛んに売買されています。
一方、DeFi (Decentralized Finance、分散金融) は、スマートコントラクトの金融への応用です。スマートコントラクトで金融アプリケーションを記述し実行することで、従来は金融機関が担っていた「信用できる第三者」の役割を排し、トークンの交換やその価格の維持、貸し借りなどが自動化できるとされています。DeFi プロジェクトを司る組織を DAO (Decentralized Autonomous Organization、自律分散組織) 化することにより、スマートコントラクトのデプロイや修正自体を、中央の管理を排して民主的に実行可能だとも言われています。
これらは、本当に多くの人々によって理解されている通りのものなのでしょうか。このセッションでは、NFTやDeFiの技術の勘どころを押さえることで、これらの技術の「宣伝通りではない部分」を明らかにしていきます。かつ、政府が主導する研究会や実証実験の紹介などを通して、これらが持ちうる「可能性」と、現在と未来に向けた「課題」をみなさんとともに考えます。
Interop Tokyo カンファレンス 2022
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斉藤賢爾 氏
早稲田大学
大学院経営管理研究科
教授
メタバース : 広報・デジタルツインから、新たな市場・文化の創造まで
Meta (超) と universe (宇宙) を合わせた造語であるメタバース (metaverse) という言葉が最近とみに流行ってきました。この言葉は、地球を覆うネットワークであるインターネットが空間的な制約を超越してきたことをちょうど反転させ、情報空間をまさに空間として捉えて縦横無尽に活用することを可能にした、新たな宇宙を指し示していると言えます。3Dグラフィクスや VR (Virtual Reality、仮想現実) といった技術の駆使によって実現されています。
メタバースの中で、人々は自分自身のイメージの追求でもあるアバターとして活動し、自分たちで世界を構築しながら社会生活を送っています。そこには新たな文化が生まれており、人々の現実・欲求・価値が今も書き換えられている最中にあります。
一方、この新たな技術と社会を、産業に応用する動きも始まっています。しかし、前世紀の常識をそのまま適用するだけでは、新たな現実感を手に入れた人々の需要には応えられないかもしれません。
このセッションでは、メタバースの文化と応用を多彩な方向から掘り下げることを通して、人とメタバースが向かっていく先をみなさんと一緒に考えます。
Interop Tokyo カンファレンス 2023
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斉藤賢爾 氏
早稲田大学大学院
経営管理研究科 教授
Web3 技術のリアリティ (デモンストレーション)
Web3という言葉がいまだに巷を賑わせています。Web 3.0を語源とするこの言葉は、「World Wide Webを応用したビジネスの革新であったWeb 2.0が、副作用として生み出した諸問題」を解決するための、新しいパラダイムを表しているはずです。その諸問題とは何で、新しいパラダイムはどんなもので、それによりどうして問題は解決されると考えられているのでしょうか。そして、そのパラダイムで本当に問題は解決されるのでしょうか。
このセッションでは、その名も“web3.py”と名づけられたPythonライブラリを中心として組み立てられた、Ethereumブロックチェーン上のスマートコントラクトの開発環境を実際に動かして、たとえばNFT(非代替性トークン)のためのシステムを実装してブロックチェーンに書き込み、トークンを発行するといったデモをしながら、Web3を支えるとされる技術の現実を露わにします。
<要旨>
●Web 1.0 から Web 3.0/Web3 に至る歴史的経緯
●Ethereum ブロックチェーンの概要と動作
●“web3.py” をはじめとする Python用プログラミングライブラリを用いた NFT 作成等のデモ
●Web3における「所有」の正体