人材採用の成功事例に関する調査レポート【2026年最新】

人材採用とは、事業に必要な能力を持つ人材を見極め、入社後の活躍と定着まで設計する取り組みです。労働人口の減少や専門人材の獲得競争、事業環境の不確実性が高まるなか、職務や評価基準を明確にし、採用を事業成果につなげることが大企業の課題になっています。

このレポートは、2021〜2025年開催の「人材採用」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演の関心は、働き方の変化を背景にした職務定義から、DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の確保・育成、活躍と定着の設計を経て、生成AI(文章や画像などを生成する人工知能)の活用へ移っています。一貫しているのは、採用を事業戦略と人材要件に接続する問題意識です。近年は特に、AIによる候補者情報の整理や適性判断と、人が構想力や協働力を見極める役割分担が議論されています。

2025年(AIファースト時代、採用を「未知の市場を進む能力」の設計へ)

2025年の人材採用で企業が直面していた中心課題は、決められた職務を遂行する人を確保することから、正解のない事業を前に進められる人材をどう集め、育てるかへの変化です。ビズスタに掲載された講演情報では、宇宙のような未知の市場で新規事業を立ち上げる過程が、BtoB事業の人材採用・育成と重ねて扱われています。市場そのものをつくるには、専門性だけでなく、外部との連携、戦略の組み立て、速い意思決定を同時に担う力が必要です。IPA「DX動向調査」でも、デジタル化を進める人材の確保・育成は課題として挙げられており、採用は人員補充ではなく、事業変革の実行力を組み込む経営課題になっています。

それまでの対策では、母集団形成、採用ブランディング、エージェント活用、選考基準の精緻化など、候補者に企業を選んでもらう工夫が中心でした。2024年の掲載情報にも、内定承諾率や離職、デジタル人材の獲得を改善する方法が目立ちます。しかし、新規事業では既存の職種定義や過去の採用実績だけでは、未知の課題に対応できる人を見分けにくくなります。AIファーストの採用が注目される現在、AIによって候補者情報の整理や適性判断を効率化できる余地はありますが、それだけでは事業の不確実性を引き受ける姿勢や、社外を巻き込む力までは測れません。

取り組みは、採用活動を単独で最適化する方向から、事業開発の設計と人材の見立てを一体化する方向へ変わっています。Cross Space & Sustainability, LLCの黒須聡氏が語る実践では、国家宇宙機関や国際NGOとの連携を進めながら、戦略策定とスピード重視の意思決定を行い、その過程に必要な人材の採用・育成を考えています。重要なのは、完成した職務要件に人を当てはめるのではなく、事業の進展に合わせて必要な能力を定義し直す点です。確認できる成果は売上や採用数などの数値ではありませんが、採用を「人を増やす機能」から「未知の市場を進む組織能力をつくる機能」へ置き換えたことにあります。

この事例が示しているのは、2025年の採用では、候補者を集める施策よりも、どのような不確実性を誰と越えるのかを明確にすることが競争力になるということです。採用担当者だけでなく、事業責任者が採用要件と育成方法の設計に関与し、社外との連携経験や学習力を評価する必要があります。翌年に向けては、AIで定型的な採用業務を効率化しながら、人が判断すべき構想力や協働力をどう見極めるかが焦点になります。採用の成果も、入社人数や承諾率だけでなく、新規事業の意思決定速度や組織が学習し続ける力で測る段階へ進みそうです。

2024年(採用数競争から、活躍と定着を設計する人材採用へ)

2024年の人材採用で企業が直面していたのは、単に応募者を増やすことではなく、採用した人材を早期に戦力化し、定着させることでした。労働人口の減少に加え、生成AIや事業転換によって必要なスキルが変わり、特にデジタル人材やエンジニアの獲得競争が激しくなっています。厚生労働省「厚生労働白書」でも、人口構造の変化や人材確保が課題として挙げられています。前年まで注目された採用ブランディングや経営層を巻き込んだ採用だけでは、候補者に選ばれる入口はつくれても、入社後の活躍や離職まで制御しきれなくなっていました。

不足していたのは、採用活動を「母集団形成」「選考」「内定承諾」で切り分けず、入社後の成果まで一つの設計として捉える視点です。掲載された講演では、書類や面接での印象、過去の経験、採用担当者の勘だけに頼るのではなく、活躍・離職・エンゲージメントに関わるデータや実証研究を使い、採用要件そのものを見直す方向が強まりました。デジタル人材についても、現場の要望をそのまま求人票にするのではなく、ペルソナやスキル基準を設計し、候補者が重視する情報を採用プロセスに組み込むことが求められています。IPA「DX白書」でも、DXを担う人材の確保・育成は継続的な課題とされています。

この変化を象徴するのが、採用を接点づくりから事業戦略へ広げた日立製作所、デジタル人材との出会い方を多様化したソフトバンク株式会社、採用広報を母集団形成と内定辞退の抑制に結び付けた日本電気株式会社(NEC)です。日立製作所では、労働環境や求職者の価値観、事業戦略の転換を踏まえて採用戦略を変える必要性が示されました。ソフトバンク株式会社は地方創生インターンやAI動画面接を取り入れ、新卒・中途のデジタル人材に接触する方法を広げています。日本電気株式会社(NEC)では、企業の実態や仕事の魅力を伝える採用ブランディングによって、母集団形成と内定辞退率の軽減を狙っています。数値成果が示された事例ではないものの、三社に共通するのは、求人媒体や待遇の調整だけでなく、候補者が企業を理解し、入社後を具体的に想像できる仕組みまで採用施策に含めた点です。

複数の掲載情報から見える2024年の潮流は、「採る」から「活躍できる人を見極め、選ばれ続ける状態をつくる」への転換です。エージェントとの関係を推薦の質の改善に使い、選考では自社との適合を見極め、入社後はエンゲージメントやキャリア自律まで視野に入れる。採用担当者だけで完結させず、現場と経営、広報、育成を接続することが成果の前提になりました。翌年以降は、生成AIを採用業務の効率化に使う段階から、候補者ごとの訴求、スキル評価、入社後の活躍予測を支援する段階へ進み、採用の成否を内定数ではなく戦力化と定着で測る動きがさらに強まると考えられます。

2023年(採用を「求人」から経営OSへ、発信・分析・学習で競争する)

2023年の人材採用で企業が困っていたのは、求人を出して応募を待つだけでは、即戦力のITエンジニアやAI・データ分析人材を確保できないことでした。物価高騰による処遇改善に加え、転職の活発化によって、採用だけでなく定着やエンゲージメントまで同時に問われています。管理部門でも、DX化を担う人材の採用と、転職理由を踏まえた離職防止が課題になりました。IPA「DX白書」が指摘するデジタル人材の確保・育成の難しさや、厚生労働省「厚生労働白書」が扱う働き方・人材流動化の課題が、採用現場の実感と重なります。

それまでの対策は、採用要件を細かく定め、求人媒体やエージェントから候補者を集めることに重点が置かれていました。しかし、経験者に限定すると母集団が狭まり、待遇改善だけでは企業を選ぶ理由をつくりにくくなっています。前年までの講演で目立ったDX人材の採用手法や職務基準の整備も、2023年には「採用活動をどう見せるか」「社内外の人材をどう組み合わせるか」「入社後に活躍できるか」まで含めて設計し直す必要が生じました。採用は人事部門だけの業務ではなく、経営課題を解くための人材戦略へと位置づけが変わっています。

変化を象徴するのが、採用広報、データ分析、学習可能性を組み合わせる動きです。Qiitaでは、エンジニア文化に根づく情報発信を企業や個人の成長、採用力につなげる考え方が示されました。企業が自社の技術や仕事の実態を継続的に発信すれば、求人票では伝わりにくい魅力や価値観を候補者に届けられます。Amazonでは、勘と経験に頼るのではなく、数百万人規模の従業員データを分析し、人材活用や成果の予測につなげる方向が示されています。福利厚生についても、単なる付加価値ではなく、インフレ対策と採用・定着を一体化する施策として捉え直されました。この段階で確認できる成果は、採用広報の接点拡大や、人材施策を予測・検証する仕組みの整備であり、離職率や採用数の改善値まで公開された事例は限られます。

複数の掲載情報から見える共通点は、採用を「空いたポストを埋める活動」から、「選ばれる理由をつくり、適性を見極め、入社後の活躍まで測る活動」へ移したことです。AI人材では、実務経験だけでなく、新卒層の知識や育成余地を見直す動きも現れました。さらに、経営者が採用に直接関与し、副業・兼業人材を短期の課題解決に活用する発想も広がっています。2023年は、採用の成果を人数だけでなく、発信、データ、定着、外部人材の活用を通じた事業課題の解決で捉え始めた年でした。翌年は、この変化が採用ブランディングの精緻化、デジタル人材のペルソナ設計、内定承諾や入社後活躍の検証へ進み、採用活動そのものの再現性が問われる段階につながります。

2022年(DX人材採用が迫った、採用の再設計)

2022年の人材採用で企業が直面した中心課題は、単に応募者を増やすことではなく、事業戦略を実行できる人材を見極め、採用後に活躍させることでした。特にDXやグローバル化を担う人材は、従来の職種別採用や知名度に頼った母集団形成だけでは確保しにくくなっています。IPA「DX白書」でも、デジタル化を進めるうえで人材の確保・育成が課題として挙げられています。前年に目立ったジョブ型雇用の是非をめぐる議論から、2022年は採用基準や選考方法を実務に落とし込む段階へ移った年でした。

それまでの対策で足りなくなったのは、求人広告の強化や面接スピードの向上だけでは解けない「自社が必要とする人材像の曖昧さ」でした。採用市場の早期化、オンライン化、学生の職業観の変化によって、企業の魅力を一方的に伝えるだけでは選ばれにくくなっています。掲載された講演では、汎用的なコンピテンシーを基準にした採用は事業変化に追いつかず、経営戦略と人材要件を接続する必要があると示されています。採用は人事部門だけの業務ではなく、経営と現場が要件を定義し、選考からオンボーディングまで設計する仕事へ変わり始めました。

変化を象徴するのが、株式会社リログループとアドビ株式会社の取り組みです。株式会社リログループはグローバル人材の採用強化に向け、英語力の基準をTOEICからCEFRベースへ変更し、2022年6月から「PROGOS」を活用した実用的な英会話力の可視化を構築しています。これは資格の有無を見る採用から、事業で使える能力を測る採用への転換です。アドビ株式会社では、カスタマーサクセス組織の立ち上げ・変革に合わせて、人材採用と育成のあり方自体を見直しています。職種の拡大に応じて組織と人材の仕組みを変えた点が重要です。いずれも掲載概要で採用数や生産性の数値までは示されていませんが、必要能力の定義と育成への接続という成果は確認できます。

複数の事例に共通するのは、採用を入口の勝負から、事業成果まで続く仕組みとして捉え直したことです。人材要件の設定、評価、入社後の育成を一体化し、デジタル人材では新卒だけでなく外部人材の活用や、候補者に活躍の場を示すことも重視されました。採用難に対して待遇や露出を競うだけでなく、何を任せ、どの能力をどう測り、どう伸ばすかを具体化する方向へ進んだのです。翌年以降は、この流れが採用後の定着・活躍、採用ブランディング、データに基づく人材の見極めへ広がり、採用の成否を入社人数ではなく事業への貢献で測る動きにつながっていきます。

2021年(ジョブ型採用への転換で問われた職務の再設計)

2021年の人材採用で企業が直面した中心課題は、従来の「人を採ってから仕事を決める」仕組みが、ニューノーマル時代の働き方や専門人材の獲得に合わなくなったことです。リモートワークの定着や事業環境の変化によって、どの職務に、どの能力を持つ人材が必要なのかを採用段階から明確にする必要が高まりました。厚生労働省「労働経済白書」でも、働き方や雇用を取り巻く環境の変化への対応が課題として挙げられており、採用は人事部だけの業務ではなく、事業戦略と結び付けて考えるテーマになっていました。

それまでの対策で足りなくなったのは、募集要件の細かな見直しだけでは解決できない、雇用の前提そのものへの対応です。年齢や経験、ポテンシャルを中心に一括採用する方法は、配属後の育成を前提にした制度としては機能しても、専門性や成果を軸に人材を確保するには限界があります。一方で、職務を明確にすれば自動的に採用が成功するわけでもありません。職務内容、評価、処遇、キャリア形成までを一体で設計しなければ、ジョブ型は単なる採用用語にとどまります。リクルートワークス研究所の中村天江氏が論点にしたのも、制度の名称ではなく、なぜジョブ型が必要なのかという本質でした。

この変化を具体的に示すのが、KDDI株式会社の取り組みです。KDDI株式会社はジョブ型雇用に取り組む企業として、採用や雇用制度を職務起点へ移す議論の当事者になりました。重要なのは、採用広報の表現を変えたことではなく、必要な役割を定義し、その役割と人材の専門性をどう接続するかを考え始めた点です。掲載された講演概要では、導入による離職率や採用期間などの定量成果までは示されていません。ただし、ジョブ型を掲げるだけでなく、その目的と運用条件を問い直す段階に入ったことは確認できます。

複数の登壇者の議論から読み取れる共通点は、採用の競争力を母集団の大きさだけで測らず、事業に必要な職務と人材要件の接続で捉え直したことです。2021年の潮流は、採用手法のデジタル化より先に、企業が「何の仕事を、どの水準で任せるのか」を言語化する方向へ進んだことでした。翌年以降は、この職務定義をDX人材や専門職、新卒採用の基準へ展開し、スキル評価や社内外の人材活用と結び付けることが焦点になります。採用の成果も、採用数だけでなく、配置後の活躍や事業への貢献まで問われるようになります。

全体を通じて、掲載講演では採用を人数確保の機能から、職務定義、選考、育成、定着を一体化して事業の実行力を高める仕組みへ捉え直す構図が示されています。働き方や必要スキルの変化に応じて、発信、データ活用、外部人材との協働、AI活用を組み合わせる方向へ議論が移っています。

※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。

※本レポートは、ビズスタに掲載された「人材採用の成功事例」をテーマにした講演情報を元に傾向を分析しています。

※市場環境の参照:IPA「DX動向調査」、厚生労働省「厚生労働白書」、IPA「DX白書」、厚生労働省「労働経済白書」

編集者:ビズスタ市場調査チーム

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