離職対策とは、退職の兆候を捉え、評価や安心感、日常の関係性を整えて人材の定着を促す取り組みです。採用難に加え、メンタル不調や生産性低下も離職と結び付くなか、待遇や採用数の調整だけでは解決しにくく、職場ごとの課題を把握して現場の対話や管理職の行動を変えることが、大企業の経営課題になっています。
このレポートは、2026年開催の「離職対策」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演では、退職後の分析から、AI(人工知能)で職場の状態や離職の兆候を捉え、対話や組織開発につなげる取り組みへ関心が移っています。一貫しているのは、制度だけでなく安心感や関係性を整え、定着につなげる問題意識です。近年は特に、評価や面談記録の分析を管理職の対話と行動変容に結び付ける議論が増えています。
2026年(AIファーストで変わる離職対策、制度から関係性の再設計へ)
2026年の離職対策で中心課題となっているのは、退職者を減らす施策の不足というより、なぜ人が辞めるのかを職場ごとに捉えきれないことです。採用難に加え、メンタル不調や生産性低下までが離職と結び付くなか、待遇や採用数だけを調整しても定着につながりにくくなっています。厚生労働省「労働経済白書」でも、人材の確保・定着と働きやすい職場づくりは重要な課題として扱われています。今回、ビズスタに掲載されている講演からは、離職を個人の意欲や相性の問題ではなく、評価、安心感、日常の関係性を含む組織課題として捉え直す動きが見えます。
従来の対策で足りなくなったのは、制度を導入した後の運用と、現場で起きている変化を把握する仕組みです。評価制度があっても、基準が不明確だったり、上司との対話が形骸化したりすれば、従業員は努力が正しく見られていないと感じます。また、離職理由を退職時の面談だけで確認する方法では、辞める前に生じた不満や孤立を捉えられません。株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソースの山田博之氏は、離職理由と対策を整理したうえで、評価制度の設計・運用と離職者傾向の分析を結び付ける必要性を示しています。制度の有無ではなく、離職の兆候を改善行動へ変換できるかが問われています。
取り組みの方向は、離職者を事後的に分析する段階から、職場の状態を継続的に捉え、管理職や現場の関係性に働きかける段階へ移っています。AIファーストの考え方を取り入れれば、面談記録や評価、従業員の傾向を整理し、離職リスクの兆候や確認すべき論点を可視化するところまでは、従来より速く進められます。ただし、AIが職場の不安や信頼関係を直接修復するわけではありません。分析結果を上司との対話、評価の見直し、組織開発につなげる運用が必要です。
この変化を具体的に示すのが、株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソースの示す評価制度と離職者傾向分析の組み合わせです。成果として確認できるのは、評価を離職防止の接点として設計し、分析対象と見るべき項目を具体化したことです。一方、一般社団法人自立した人と組織を育成する協会の下田直人氏は、制度整備だけでは採用難、離職、メンタル不調、生産性低下に対応できず、職場の空気や安心感、関係性への伴走が必要だとしています。ここでは、カオナビ社の社労士コミュニティという場も、従来の労務支援をより良い職場づくりへ広げる方向を示しています。共通するのは、数値や制度を入口にしながら、最後は現場の対話と管理職の行動を変えることです。2026年の成果は、離職を完全に防いだというより、予測・把握・介入を一つの流れに組み替え始めた点にあります。翌年は、AIによる分析精度の向上と、人が担う対話・組織開発をどう接続し、実際の定着率や職場改善へ結び付けるかが焦点になります。
全体を通じて、掲載講演では、離職を個人の意欲や相性ではなく、評価制度の運用、職場の安心感、関係性を含む組織課題として捉える構図が示されています。AIによる予測・把握を、上司との対話、評価の見直し、組織開発へ接続することが、制度整備の先にある課題です。
※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。
※本レポートは、ビズスタに掲載された「離職対策の成功事例」をテーマにした講演情報を元に傾向を分析しています。
※市場環境の参照:厚生労働省「労働経済白書」
編集者:ビズスタ市場調査チーム