若手採用の成功事例に関する調査レポート【2026年最新】

若手採用とは、新卒や若手人材を迎え入れ、配属後の成長と定着まで見据えて組織の担い手をつくる取り組みです。人材不足や就社意識の変化で採用競争が厳しく、入社前の期待と実際の仕事のずれ、早期離職、メンタルヘルス不調が企業課題となっています。採用広報や待遇改善だけでなく、仕事理解、受け入れ、育成を一体で設計することが求められています。

このレポートは、2021〜2024年開催の「若手採用」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演の関心は、採用前から育成を始める発想から、入社後の体験設計と活躍支援へ移り、直近ではAI活用にも広がっています。一貫しているのは、採用と配属・育成・定着を切り離さず、若手が成長し活躍できる仕組みをどうつくるかという問題意識です。近年は特に、オンボーディング(入社後の受け入れ・定着支援)と、AIによる候補者情報や育成状況の整理が論点になっています。

2024年(AIファースト時代、若手採用を「入社後」から逆算する)

2024年の若手採用は、応募者を集めることよりも、入社後に期待とのずれを生じさせず、成長と定着につなげることが中心課題になりました。新卒の就社意識が薄れ、リアリティショックや将来を早期に見切った離職が起きる一方、新卒採用の難化を受けて若手の中途採用へ切り替える企業も増えています。採用しても早期離職やメンタルヘルス不調が起きれば、事業継続にも影響します。厚生労働省「厚生労働白書」が示す人材確保・職場環境の課題とも重なり、若手採用は採用部門だけでなく、現場管理職と経営の問題へ広がりました。

従来の対策で足りなくなったのは、給与や福利厚生、採用広報だけでは定着理由をつくれない点です。賃上げと福利厚生のどちらがエンゲージメントに効くかが議論されたのは、待遇改善が必要であっても、それだけでは優秀な人材の流出を止めにくいからです。また、Z世代を一括りにして接する方法も限界を迎えました。掲載された議論では、価値観の多様性を前提に、入社前に仕事の実態を伝え、入社後は世代や個人に合わせてオンボーディングする必要性が示されています。DX人材についても、正社員採用だけに頼らず外部人材を組み合わせる考え方が広がり、IPA「DX動向調査」が指摘する人材確保・育成の難しさが、若手採用の現場にも表れています。

企業の打ち手は、「採用する」から「活躍できる仕組みを設計する」方向へ変わりました。象徴的なのが、三和建設株式会社の“ひとづくり寮”です。採用・定着が難しい建設業界で、社員数を7年間で2倍近くに増やし、新卒社員の入社3年以内の離職率を2020年採用以降ゼロにしています。生活をともにしながら成長を支える場を、福利厚生ではなく人的資本経営の基盤として位置づけた点が重要です。もう一つは株式会社サイバーエージェントです。エンジニア・クリエイターが従業員数の半数近くを占める組織で、伸びる人材を見極める採用基準と、若手を早期に抜擢する文化を組み合わせています。建設ディレクターのようにITとコミュニケーションで現場とオフィスをつなぐ職域も、若手を採るだけでなく、デジタル業務を担う役割を社内につくる発想として注目されました。

これらの事例が示すのは、若手の定着を待遇や精神論で支えるのではなく、成長実感、周囲との接点、任される仕事を組織の仕組みとして用意する流れです。採用基準も、完成した即戦力より伸びしろを見極め、入社後の配置・育成まで一体で考えるものに変わりました。AIファーストの時代には、候補者情報や育成状況の整理、個々に異なるつまずきの把握をAIで補助できる余地がありますが、2024年の掲載情報からは、AIだけで採用難や離職を解消した実績までは確認できません。翌年は、2025年4月の男性育休に関する法改正も含め、待遇、働き方、成長機会をデータで検証しながら、採用競争力と定着を同時に高める段階へ進みます。

2023年(「採る」から「選ばれ、育ち、活躍する」若手採用へ)

2023年の若手採用では、応募者を集めること自体よりも、採用競争の中で自社を選んでもらい、入社後に活躍し続けてもらうことが中心課題になりました。ビズスタに掲載されている講演では、国家公務員でさえ採用試験への応募者減少や若手職員の離職増加に直面していると語られています。人材不足を採用広報だけで埋めるのは難しく、厚生労働省「厚生労働白書」でも、働き方や人材確保、職場への定着は重要な課題として扱われています。従来のように求人情報を一方的に発信し、学歴や経歴を軸に候補者を絞り込むだけでは、価値観や成長機会を重視する若手に届きにくくなりました。

それまでの対策に足りなかったのは、採用を入社前の選抜で終わらせず、候補者との接点から入社後の成長まで一続きで設計する視点です。2023年の講演では、Z世代に対して企業の魅力を伝えるだけでなく、社員の声や説明会動画などを通じて情報を開くこと、選考段階や学生のタイプに応じて対話を変えることが重視されています。レバレジーズ株式会社の事例は、その転換を象徴します。年間20本もの新規事業を若手に委ね、20代の事業責任者を生み出す考え方は、即戦力を外部から獲得する発想ではなく、若手を採用して早期に責任ある仕事へ接続する発想です。志望度を高める面接・面談でも、学生を5つのタイプに分類し、フィードバックを重視する方法が示されました。

取り組みの方向は、採用担当者が候補者を評価する一方向のプロセスから、候補者との相互理解、若手の育成、働き続けられる環境づくりを組み合わせる仕組みへ変わりました。AJS株式会社では、属人化した販売業務やシステム外のやり取り、転記作業を解消するため、intra-mart(IM-BPM)+SAP Signavioによる業務プロセス改善に、入社1年から5年目の若手メンバ中心で取り組み、当初の目的を達成しました。これは若手を「教わる側」に限定せず、業務変革の担い手として抜擢した事例です。一方、人事院は、採用難と若手職員の離職を制度面から捉え、官民の人材流動性、人材マネジメント、フレックスタイム等の柔軟な働き方を改革の対象にしています。採用メッセージの改善だけでなく、入職後の仕事の進め方そのものを変えようとしている点が重要です。

複数の事例から見える共通点は、若手採用の成果を応募者数や内定承諾だけで測らず、入社後に成長機会を得られるか、仕事を標準化・改善できるか、柔軟に働けるかまで広げたことです。2023年は「優秀な若手をどう採るか」から、「若手が納得して選び、早く仕事を任され、活躍を継続できる会社をどうつくるか」へ、若手採用の定義が変わった年でした。翌年はこの流れが、採用後のオンボーディング、世代に応じた定着施策、報酬や福利厚生、人的資本経営へと広がり、採用と定着を別々に扱わない運用がより問われることになります。

2022年(採用競争から入社後の体験設計へ)

2022年の若手採用で企業が直面していたのは、母集団形成の難しさだけではありません。入社前に魅力を伝えても、入社後に期待との落差を感じれば、早期離職やエンゲージメント低下につながります。掲載情報では、就活生の60%が転職を前提に就職するという環境変化も示されており、若手を「採用して終わり」にはできない状況でした。Z世代の価値観、テレワークによる接点減少、配属後の不安が重なり、採用・育成・定着を一つの課題として捉える必要が高まっています。厚生労働省「労働経済白書」でも、労働移動や人材確保は企業の課題として挙げられています。

それまでの対策は、採用広報の強化、条件の改善、理念への共感形成など、入社までの魅力づけに重点が置かれがちでした。しかし、若手の就社意識が薄れるなかでは、採用時に期待を高めるだけではリアリティギャップを埋められません。前年までに見られた、内定者段階から育成を始める発想も、2022年にはさらに踏み込んで、配属後数年間のキャリア形成や上司の支援まで設計する方向へ広がりました。経済産業省「未来人材ビジョン」が示す人材像の変化とも重なり、企業には一方的に適応を求めるのではなく、若手が成長実感を持てる仕組みが求められました。

取り組みの軸は、採用施策から候補者体験・従業員体験を連続させる「ピープルエクスペリエンス」へ移っています。株式会社グッドパッチに関する講演では、採用とマネジメントを分断せず、情報の透明性や若手のキャリア観を踏まえて、入社前から入社後までの体験を整える考え方が示されました。GMOアドパートナーズ株式会社では、新卒1年目をその後の飛躍を左右する重要期間と位置づけ、全社で成長支援に取り組んでいます。心理的安全性にも目を向け、不安や失敗を抱え込ませない育成を進め、採用人材の育成・定着で成果を挙げてきた点が重要です。

これらの事例が示しているのは、若手採用の成果を「内定者数」ではなく、入社後に期待を上回る体験を提供できたかで測る潮流です。株式会社グッドパッチの論点とGMOアドパートナーズ株式会社の実践には、候補者への発信、現場での受け入れ、上司の支援を一続きにする共通点があります。2022年は、Z世代を理解して選ばれる企業になる段階から、入社後に「この会社で良かった」と思える状態を設計する段階へ移った年でした。翌年以降は、こうした体験設計を面接・面談、オンボーディング、キャリア開発へ細分化し、定着や活躍を検証する動きにつながっていきます。

2021年(採用を入社前から始める「育てる採用」への転換)

2021年の若手採用で企業が直面していたのは、学生を採用人数として確保しても、入社後に期待した配属や活躍につながらない問題です。講演概要では、日本の一括採用が持つ効率性の一方で、本人の希望と配属先のずれである「配属ギャップ」や、若手が戦力化するまでの時間が課題として示されています。世代観の変化も重なり、内定を出せば採用が完了するという考え方では、定着と活躍まで見通しにくくなっていました。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」でも、若年層の定着は継続的な課題として扱われています。

それまでの対策は、採用広報で会社の魅力を伝え、選考で適性を見極め、入社後に研修を施すという段階別の発想になりがちでした。しかし、この方法では選考時点で形成された期待と、配属後に経験する仕事とのずれを埋めきれません。採用と育成を切り離しているため、入社後に生じるリアリティショックへの対応も後手に回ります。2021年に示された「育てる採用」は、採用を人材の完成度を判定する場ではなく、本人が仕事やキャリアを理解し、企業との接点を深めながら成長を始める過程として捉え直すものでした。

この変化を具体化したのが、内定前後からキャリア開発を始める設計です。小山健太氏と高橋政成氏の講演では、主体的に活躍する若手社員への調査や企業事例を踏まえ、採用広報、インターン、内定者支援、新卒育成を一続きにする考え方が示されました。ここでの成果は、特定企業の離職率や戦力化期間の改善として数値化されてはいませんが、企業が入社前から仕事理解と自己理解を促し、配属後の適応と自律的な活躍を狙う仕組みへ移り始めた点にあります。事例が示すのは、若手の定着を研修だけで実現するのではなく、採用時の期待形成から設計し直す必要性です。

複数の講演内容を通じて見える共通点は、若手採用の成果指標が「採用できたか」から「配属後に定着し、主体的に動けるか」へ広がったことです。2022年の掲載情報では、Z世代の育成、リアリティギャップ、心理的安全性、ピープルエクスペリエンスへ論点が進んでおり、2021年の転換が翌年の定着施策へ接続したと読めます。翌年以降は、内定者から新人までの体験を連続的に設計し、本人の志向と配属・育成をどう接続するか、さらに実際の定着率や早期戦力化で効果を検証する段階へ進みました。

全体を通じて、掲載講演では若手採用を応募者の獲得や内定承諾で終わらせず、配属後の成長、業務改善、柔軟な働き方、定着まで一体で設計する構図が示されています。社会や世代の変化を背景に、採用部門だけでなく現場管理職と経営が、期待とのずれを抑えながら若手の活躍を支えることが課題となっています。

※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。

※本レポートは、ビズスタに掲載された「若手採用の成功事例」をテーマにした講演情報を元に傾向を分析しています。

※市場環境の参照:厚生労働省「厚生労働白書」、IPA「DX動向調査」、厚生労働省「労働経済白書」、経済産業省「未来人材ビジョン」、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」

編集者:ビズスタ市場調査チーム

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