会計ソフトとは、仕訳や決算だけでなく、請求・証憑・経費精算から経営管理までのデータを扱う業務基盤です。制度改正や人手不足、紙・Excel・属人的な運用が残るなか、企業には法令対応と業務効率化を両立し、会計情報を迅速な判断とグループ統制につなげることが求められています。
このレポートは、2020〜2026年開催の「会計ソフト」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演の関心は、危機下の紙・出社対応から業務のデジタル化、制度対応とデータ連携へ移り、近年はAIを組み込んだ会計基盤の再設計へ広がっています。一貫しているのは、会計処理を効率化するだけでなく、経営判断とグループ統制に使える情報基盤へ変える問題意識です。近年は特に、新リース会計への対応、契約情報の整理、AIによる自動化、経理人材の経営対話への転換が議論されています。
2026年(AIファーストで再定義される会計ソフトの役割)
2026年の会計ソフトをめぐる中心課題は、法令対応を確実に進めながら、経理を経営判断に貢献する機能へ転換できるかです。掲載された講演では、親会社と子会社にまたがる新リース会計への対応と、経理人材が会計処理の先にある専門領域へ進むための思考法が焦点になっています。契約の識別や処理方針をグループ内でそろえる実務負荷に加え、単なる記録係ではなく、数字の意味を説明し事業に提言する役割が求められています。IPA「DX白書」でも、データを活用できる人材と組織への変革は課題として挙げられています。
これまでの対策は、会計ソフトの機能追加やクラウド化、電子化によって入力・申請・集計を効率化し、インボイス制度や電子帳簿保存法など個別制度への適応を急ぐものでした。2025年にも新リース会計の論点整理やAIを使った業務効率化、クラウドERPの導入が扱われていますが、2026年に浮かぶ不足は、ツールを導入した後の判断プロセスと人材の使い方です。処理を速くするだけでは、契約解釈のばらつきや、蓄積した会計データが経営に届かない問題は解消しません。経済産業省「デジタルガバナンス・コード」が示すデジタル技術と経営戦略の一体化も、会計領域に及んできたと読めます。
変化の方向は、会計ソフトを「仕訳を作る道具」から、契約・取引・グループ会社の情報をつなぎ、判断を支える基盤へ広げることです。大樂弘幸氏(大樂公認会計士・税理士事務所・所長)の講演は、新リース会計を親会社だけの制度対応にせず、子会社を含む契約管理と会計方針の統一として捉える視点を示しています。一方、山田真哉氏(芸能文化税理士法人・会長 公認会計士・税理士 YouTuber)は、経理の専門性を会計処理に閉じず、分析や経営との対話につなげる「戦略脳」への転換を促しています。前者は業務の境界をグループへ広げ、後者は経理人材の役割を上流へ広げる事例です。
この2つの講演から確認できる成果は、掲載概要の範囲では具体的な削減時間や改善率ではなく、会計ソフト導入の成否を「処理件数」ではなく「統制の一貫性」と「経営への貢献」で測る方向へ評価軸が移ったことです。AIファーストの実務では、AIが契約情報の整理、仕訳候補の提示、異常値の発見、会計判断の説明材料づくりまで支援し、人は例外判断と経営対話に集中できるようになります。ただし、2026年時点で対象講演から企業全体の定量成果までは確認できず、次の課題はAIを組み込んだ会計基盤が、リース管理の精度や決算の早期化、意思決定の速さにどこまで結び付くかを測定することです。翌年は、制度対応を終点とせず、AIと人材の役割分担を前提にした会計業務の再設計が進むでしょう。
2025年(新リース会計とAIが迫る、会計ソフト再構築)
2025年の企業が会計領域で直面した中心課題は、日々の入力や証憑処理を効率化することにとどまらず、制度変更に耐えられる契約・データ・業務基盤を整えることでした。特に新リース会計基準は2027年4月以降の事業年度から強制適用され、契約書の中からリースに該当する取引を見つけ、期間を判定し、資産と負債を適切に計上する必要があります。対象範囲や期間を誤れば過大計上や将来の遡及修正につながるため、経理部門だけでなく、契約を管理する現場や経営層も関わる課題になりました。経済産業省「DXレポート」が指摘してきたレガシーシステムの問題も、会計データを経営判断に使ううえで無視できない制約になっています。
それまでの対策は、クラウド会計への移行、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応、請求書・経費精算のデジタル化が中心でした。しかし2025年は、既存業務を単に電子化するだけでは不十分になりました。新リース会計では契約情報を正確に収集し、会計処理までつなぐ必要があります。また、汎用的なSaaSだけでは企業固有の承認、集計、連携要件を吸収しきれないケースもあります。IPA「DX動向調査」でも、デジタル技術の導入だけでなく、データ活用や組織・業務の変革が課題として挙げられており、会計ソフトは単独の業務ツールから経営基盤へと再定義されました。
企業の取り組みは、完成済みの製品に業務を合わせる方法から、SaaSを標準基盤として活用しながら、足りない部分をAI、内製開発、ERP連携で補う方向へ変化しました。新リース会計への対応では、契約書管理にAIを用いて確認作業を効率化し、制度理解、影響範囲の把握、移行ロードマップの策定を一体で進める考え方が示されています。一方、統合型クラウドERPでは、社長直轄でレガシーシステムを刷新し、会計・業務データを統合して数字に基づく経営を目指す事例が示されました。現場主導の別事例では、取引先間のEDI連携とデータ活用を強化し、プロジェクトで育成した人材を新たなITコンサルティング事業にもつなげています。
この変化を最も端的に示すのが、株式会社ディー・エヌ・エーの取り組みです。同社は財務会計システムにSaaSを使いながら、汎用機能やアドオンだけでは対応しにくい固有ニーズを内製システムで補完しました。SaaSか自社開発かの二者択一ではなく、標準機能を活用して投資を抑えつつ、独自機能によって業務適合性を高める構成です。掲載情報にあるERP導入事例と合わせて見ると、2025年の成果は処理時間の削減だけではありません。会計データを経営に使える状態へ整え、制度対応を個別作業ではなく全社的なデータ基盤整備に変えた点にあります。
複数の事例から読み取れる共通点は、会計ソフトの導入がゴールではなく、契約、取引、会計、経営管理を連続したデータとして扱うことです。AIは契約書の確認や情報整理を支援し、内製開発はSaaSの不足を埋め、ERPは部門や取引先をまたぐ情報を統合します。前年までの法令対応・ペーパーレス化から、2025年は「正しくつなぎ、経営に使う」段階へ潮流が移りました。翌年は、新リース会計の適用準備が本格化し、AIの精度管理、契約データの棚卸し、グループ会社を含む業務標準化まで、会計部門が主導する基盤改革へ進むことになります。
2024年(インボイス対応から会計データ経営へ)
2024年の会計ソフトをめぐる中心課題は、インボイス制度や改正電子帳簿保存法への対応を、単なる法令順守で終わらせず、経理業務の生産性と経営判断の速さに結び付けることでした。現場では証憑の収集、確認、保管、仕訳入力が分断され、制度改正の解釈変更にも追随しなければなりません。加えて、月次決算の早期化や新リース会計基準への備えなど、会計データを正確かつ早く整える要求も強まっています。経済産業省「デジタルガバナンス・コード」でも、デジタル技術を経営課題の解決や企業価値向上につなげる視点が示されており、会計ソフトは記帳の道具から経営基盤へと位置付けが変わり始めました。
それまでの対策は、インボイスの登録番号確認、電子取引データの保存、請求書や経費精算の個別デジタル化など、制度ごとに穴を埋める色彩が強いものでした。しかし、入力の前後に紙やExcel、手作業の承認が残れば、業務全体の効率化には届きません。2024年の掲載情報では、制度対応の「正解」を知るだけでなく、Q&Aの改訂に合わせて運用を見直す必要性や、会計方針・業務プロセス・システムを一体で設計する重要性が繰り返し示されています。つまり不足していたのは機能の追加ではなく、部門やグループをまたいでデータが流れる業務設計でした。
企業の取り組みは、個別業務の電子化から、経費精算、財務会計、管理会計をクラウドでつなぎ、経理データを経営管理に使う方向へ進みました。その転換を明確に示すのが株式会社 明治です。会計証憑の完全ペーパーレス化に際し、紙を廃止するだけでなく、業務プロセスや社内ルールを変更し、デジタル活用を組み合わせました。その結果、年間54万枚の紙削減を実現しています。この成果が重要なのは、ソフト導入だけでなく、紙を前提にした仕事の進め方そのものを変えた点です。さらにセブン銀行は、ATMプラットフォーム事業の多角化を支える新会計システムとして『Oracle Fusion Cloud ERP』を採用し、業務効率化とデータドリブン経営を支える全社横断の基盤を整えました。会計システムの刷新が、バックオフィス改善にとどまらず事業変革を支える手段になっています。
複数の講演から読み取れる共通点は、2024年の会計DXが「法対応のための省力化」から「正確なデータを経営に戻す仕組み」へ再定義されたことです。クラウドによる一元管理に加え、AIで仕訳、分析、予測などを自動化し、財務部門が定型処理から経営高度化へ移る構想も前面に出ました。一方で、成果が数値で確認できたのは紙削減のような業務変革が中心で、AIによる企業価値向上はまだ実装・検証の途上です。翌年は、新リース会計基準への対応を契機に、契約情報と会計データの統合、グループ統制、AIを活用した業務効率化へと焦点が移り、会計ソフト選びよりも、変化に耐えられるデータ基盤と運用体制の設計が問われます。
2023年(インボイス対応を経営基盤改革へ変える会計ソフト)
2023年の会計ソフトをめぐる中心課題は、インボイス制度と電子帳簿保存法への対応を、限られた人員で正確に進めながら、日常の経理業務も止めないことでした。請求書や領収書の受領、内容確認、仕訳、支払い、証憑保存までに紙やメール、Excelが介在し、制度対応が新たな入力・確認作業を増やす懸念もありました。厚生労働省「厚生労働白書」が示す人材確保の難しさも、経理部門の負担を重くする背景です。前年の掲載情報では、請求書のデジタル化や会計ソフトとの連携がDXの入口として語られていましたが、2023年は制度開始を目前に、その入口を全社の業務改革へつなげられるかが問われました。
それまでの対策では、会計ソフトを導入しても、前工程の請求書受領や経費精算、後工程の支払い・証憑管理が別々に残り、二重入力や手作業の照合を解消しきれませんでした。法令に合わせて帳票の様式や保存方法を変えるだけでは、経理が経営判断に使える情報を早く提供する状態にも届きません。そこで取り組みは、単体の会計ソフトを置き換える発想から、販売管理やワークフロー、証憑、経費精算をつなぎ、データを一度入力すれば後続業務へ流れる仕組みへ変化しました。IPA「DX動向調査」でも、DXを進めるうえでデータ活用や組織・人材の課題が挙げられており、会計領域でもシステム導入だけでなく、処理ルールと業務プロセスの統一が焦点になっています。
この変化を最も具体的に示すのが株式会社メイコーです。グループ24社の会計システムと処理ルール、予算編成の仕組みを統一し、経営管理の統合DBを3名で内製化しました。半期に2,500を超えていたExcelの受け渡しを減らし、拠点別・部別の収支や予算・実績を自動化した結果、従来6時間かかっていた集計を30分で集計・分析できるようになりました。この事例が重要なのは、会計ソフトの効率化を入力作業の削減にとどめず、不正防止や内部監査も含むグループガバナンスと、分析中心の業務へ広げた点です。さらにKDDI株式会社は、DXを目的ではなく手段と位置づけ、会計業務の効率化とガバナンス強化を進めながら、本体とグループ会社の共通オペレーションを集約するコーポレートシェアードサービスを立ち上げました。大和ハウス工業株式会社も、ECCからS/4HANAへの移行を、創業100周年に向けた経営基盤整備の一手として捉え、グローバルでの会計・ITガバナンス強化を目指しています。
複数の事例から見える共通点は、2023年の会計DXが「制度に間に合わせる」段階から、「統一したデータを経営と統制に使う」段階へ移ったことです。成果は、メイコーの集計時間短縮のように可視化されたものがある一方、グローバル基盤やシェアードサービスは、将来の展開と統制を支える土台づくりの段階でもあります。つまり、この年に解決できたのは個別作業の負担だけではなく、経理を記録業務から分析・意思決定支援へ移す条件の整備でした。翌年は、制度対応後の運用を検証し、蓄積した会計データを経営管理や非財務情報と結び付け、さらに標準化・自動化を進める動きへつながっていきます。
2022年(会計ソフトを「記録」から経営基盤へ変える法対応DX)
2022年、企業が会計ソフトをめぐって直面した中心課題は、インボイス制度や改正電子帳簿保存法への対応を迫られながら、請求書の受領、入力、入金消込、経費精算といった前工程に紙と属人的な作業が残っていたことです。制度に合わせて帳票や設定を変えるだけでは、業務負荷や税務調査への備えは解消しません。IPA「DX白書」でも、デジタル化を業務の一部導入にとどめず、全社の変革につなげることが課題として挙げられています。前年までの講演で目立ったリモートワークや会計システム刷新は、働く場所や基盤を変える段階でしたが、2022年には、会計ソフト単体では解けない業務の分断が明確になりました。
そこで取り組みは、会計ソフトを入れ替えることから、請求書処理や販売管理、経費精算、入金消込までをつなぐ方向へ変わりました。クラウド、AI-OCR、決算申告の自動作成、プロセスマイニング、AIによる伝票審査、BIダッシュボードなどを組み合わせ、定型作業を減らして経理が業績管理や予算管理に時間を振り向ける考え方です。同時に、すべてを内製するのではなく、BPOやシェアードサービスで標準化する選択肢も広がりました。経済産業省「デジタルガバナンス・コード」が示すように、DXは導入自体ではなく、経営課題の解決と価値創出に結び付けて評価する段階に入っています。
この変化を具体的に示すのが、株式会社西武ホールディングス、KDDI株式会社、旭化成株式会社の取り組みです。株式会社西武ホールディングスでは、会計システム刷新の一環として請求書を電子受領し、invoiceAgentをグループ23社で利用しました。自社の効率化だけでなく、取引先側の請求業務や郵送費用の削減にも波及した点が重要です。KDDI株式会社は、システム刷新に加えてプロセスマイニング、AIによる伝票審査、BIダッシュボードを組み合わせ、会計業務を可視化しながら、グループ共通業務を集約するコーポレートシェアードサービスを立ち上げました。旭化成株式会社は、国内グループ会社約60社への経費処理システム一斉導入に向け、事業形態の違いを踏まえた検討体制とスケジュールを整えました。稼働前の段階でしたが、大企業では個別最適より展開設計そのものが成果を左右することを示しています。
複数の事例に共通するのは、会計ソフトを入力・集計の道具から、証憑を取り込み、業務を標準化し、経営判断に使えるデータを蓄積する基盤へ再定義したことです。法対応は導入のきっかけでしたが、狙いは経理部門の作業削減にとどまらず、グループ全体のガバナンスと意思決定の高度化に移りました。さらに柳良平氏が示したように、人的資本やESGを企業価値と結び付けて測る動きも現れ、会計データの対象は財務情報の外側へ広がっています。翌年は、制度対応を実際の運用に定着させ、会計・請求・販売・経営管理の連携を深めることが焦点になります。
2021年(会計ソフトを「記録」から経営判断の基盤へ再定義)
2021年、企業が会計ソフトに求めたのは、仕訳や決算を正確に処理する機能だけではありませんでした。コロナ禍によるテレワーク、電子帳簿保存法改正、インボイス制度への備えが重なり、紙の請求書や証憑、出社を前提とした承認、属人的な決算処理が経理の継続性を脅かしました。さらに、M&Aや海外拠点の拡大によって、グループ各社の数字を迅速に集め、経営に使える形へ整える必要も高まりました。IPA「DX白書」でも、デジタル技術を活用した業務変革と、変革を担う人材・組織の不足が課題として挙げられています。
従来の対策は、会計システムを刷新して処理を効率化することや、Excel作業を減らすことに重点が置かれていました。しかし、単独の業務を電子化するだけでは、請求・支払・勤怠・販売など周辺業務との間に手作業が残ります。データが部門や子会社ごとに分断されていれば、決算が終わるまで経営状況を把握できず、現場も自分たちの活動と損益の関係を捉えにくいままです。2021年の掲載情報からは、会計DXの目的が「経理を速くする」ことから、「業務全体をつなぎ、現場と経営の判断を近づける」ことへ移ったと読み取れます。
その変化を示すのが、株式会社HBAの取り組みです。新収益認識基準への対応を契機にERPと管理会計BIを組み合わせ、月末処理後の早期見込値を把握し、計数に基づいて迅速に判断する仕組みへ転換しました。キオクシアホールディングス株式会社では、東芝連結グループからの離脱を背景に、国内グループ企業複数社を含む共通会計システムを短期間で更改し、業務・運用改善と新しい経理基盤への移行を同時に進めました。パーソルホールディングス株式会社も、M&Aで拡大したグループ内の勘定科目や会計処理、システムの不統一に対し、会計システム刷新だけでなく組織統合まで踏み込みました。これらは、ソフトを入れること自体ではなく、標準化とデータ統合を改革の中心に据えた点が重要です。
共通するのは、紙をなくす局所的な改善から、会計を業務横断・グループ横断のデータ基盤へ変える動きです。会計情報を蓄積するだけでなく、BIで見込値を早期に捉え、連携によって現場の活動や売上と結び付け、意思決定へ戻す循環が重視されました。総務省「情報通信白書」が示すデジタル化と働き方の変化も、経理をバックオフィスに閉じ込めない流れを後押ししました。翌年には、この基盤を前提に、請求書受領や入金消込など個別業務の自動化、法制度対応、経営管理への活用へと焦点が移っていきます。
2020年(紙と定型処理を越える、危機対応型の経理DX)
2020年の会計ソフトをめぐる中心課題は、経理財務部門が出社や紙書類、担当者の経験に依存したままでは、決算・監査・開示を安定して続けられないことでした。新型コロナウイルス感染拡大によって、業務を止めずに処理することと、経営判断に必要な情報を早く示すことが同時に求められました。掲載された講演では、単なる入力作業の効率化ではなく、危機に左右されない経理財務部門への転換が課題として浮かび上がっています。経済産業省「DXレポート」でも、デジタル技術を活用して企業の競争力や事業のあり方を変えることが求められており、会計ソフトもその対象になりました。
それまでの対策は、紙を減らす、入力やチェックを自動化する、クラウドでデータを扱うといった個別業務の改善が中心でした。しかし、それだけでは、業務プロセス全体が分断されたままになり、担当者が別々の資料を集めて報告する負担や、変化の兆候を経営に伝えるまでの時間は残ります。2020年の講演で強調されたのは、会計システムを導入して処理を速くするだけでは不十分で、決算や報告の遅れを防ぎながら、経理が事業の変化を読み取る役割へ移る必要があるという点です。前年までの「会計ソフトを使って効率化する」という発想から、「経営に使えるデータを継続的に生み出す基盤へ変える」という再定義が進みました。
取り組みの方向は、定型業務をシステムに寄せ、経理担当者を判断や分析に振り向ける形へ変化しました。freee株式会社では、会計freeeを活用して取引処理や報告資料の作成を置き換え、経理部門が経営に示唆を与えるビジネスパートナーになる構想が示されています。株式会社オービックビジネスコンサルタントの講演でも、入力やチェックを人手で行う前提を見直し、デジタル経理によって業務の流れそのものを変える方向が示されました。株式会社ワークスアプリケーションズでは、ペーパーレスや法改正対応を守りの施策にとどめず、事業環境の変化に応じて経理が「攻め」に貢献するための会計システムが論点になっています。
この変化を象徴するのが、freee株式会社の経理部門です。会計freeeによって定型的な取引処理や資料作成をシステムに寄せ、経理が経営への示唆を生み出す役割を目指しています。株式会社ワークスアプリケーションズの示した方向も、会計システムを法対応の受け皿ではなく、経営に貢献するための情報基盤として捉えるものです。また、マッチポイント株式会社と税理士法人シマ会計、伊東 祐生税理士事務所の取り組みからは、会計業界そのものも従来型の記帳中心から、顧客の変革を支援する方向へ動き始めたことが読み取れます。数値で示された成果は掲載概要にありませんが、業務の自動化、経営情報の活用、提供価値の高度化という成果の形は明確です。2020年の潮流は、クラウド会計の導入で終わらず、危機対応と経営支援を一体化することでした。翌年以降は、リモートワーク、請求書や証憑のデジタル化、会計データのリアルタイム活用へと、会計ソフト単体から周辺業務や経営管理をつなぐ変化が進んでいきます。
全体を通じて、掲載された講演では、会計ソフトを記録や入力の道具から、業務・部門・グループをまたぐデータ基盤へ位置付け直す構図が確認できます。制度対応を起点に、クラウド化や業務標準化、AI活用を組み合わせ、経理を経営判断に貢献する機能へ転換する動きが進んでいます。
※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。
※本レポートは、ビズスタに掲載された「会計ソフトの成功事例」をテーマにした講演情報を元に傾向を分析しています。
※市場環境の参照:IPA「DX白書」、経済産業省「デジタルガバナンス・コード」、経済産業省「DXレポート」、IPA「DX動向調査」、厚生労働省「厚生労働白書」、総務省「情報通信白書」
編集者:ビズスタ市場調査チーム