ECの成功事例に関する調査レポート【2026年最新】

EC(電子商取引)とは、商品やサービスをインターネット上で販売・購入する仕組みです。販売チャネルの拡大にとどまらず、顧客データ、在庫、物流、マーケティング、基幹システムを連携させ、顧客体験を高めることが求められます。既存業務や組織を変えながら、分断したデータをつなぎ、AIも活用して選ばれる購買体験をつくることが企業の課題です。

このレポートは、2020〜2026年開催の「EC」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演の関心は、EC基盤と顧客データの整備から、AI(人工知能)を活用した顧客体験とROI(投資対効果)の検証へ広がっています。一貫しているのは、既存の基幹システムを生かしながら、組織・人材・データ・ツールをつなぎ、選ばれる購買体験を実現することです。近年は特に、田中謙司氏、山口琢也氏、安藤祐輔氏、小川哲氏に関する登壇情報に見られるように、顧客データの分断解消、AIのROI、次世代EC基盤への刷新が注目されています。

2025年(売上拡大から「選ばれ続ける体験」へ)

2025年のEC企業は、集客や販促だけでは成長を持続しにくいという課題に直面していました。モールECではAmazonや楽天の競争が激化し、セール、広告、検索対策を組み合わせても自社商品が埋もれやすくなっています。自社ECでも、購入前の接客、決済時の離脱、不正注文、購入後のリピートまで、顧客接点全体を改善する必要がありました。物流では、EC市場の拡大、労働力不足、コスト増加が重なり、配送を売上の後工程ではなく、購買体験の一部として捉える動きが強まっています。

解決策は、単発の販促施策から、顧客データを軸にした継続的な体験設計へ移っています。山口琢也氏は、株式会社ZOZOの「ZOZOTOWN」が年間購入者数1,200万人を超える中、CFM(Customer Friendship Management)の考え方に基づき、行動・購買データ、独自のファッションデータ、LINE、AIを組み合わせて顧客の「似合う」を届ける構想を紹介しました。ここでは、レコメンドを自動化するだけでなく、顧客との関係性やLTV向上を意識したコミュニケーションが重視されています。田中謙司氏も、顧客行動分析、価格変動対策、物流対応をECのデータ活用課題として挙げ、データを個別施策ではなく事業運営に生かす方向性を示しました。

企業の実装では、店舗とECのデータ統合、LINEやアプリによる接客、AI検索、CRM、決済・不正対策が一体化しています。株式会社スヴェンソンは店舗とECのデータを統合し、KARTEを活用した一貫したデジタル接客を進めました。株式会社コーセーはDECORTÉのブランド公式ECで顧客インサイト起点の体験設計に取り組み、株式会社ゴールドウインは店舗・ECスタッフを横断したOMOを推進しています。成果が数値で確認できる例では、化粧品メーカーmsh社と株式会社グッドパッチが共同開発した「Ctrlx(コントロールバイ)」が、発売当日のECプラットフォームランキングで4部門のトップを獲得しました。また、生活の木のBtoB ECでは、ShopifyとPaidを活用し、年商5,000万を実現した事例が紹介されています。

前年までのECは、OMOや顧客ID統合、検索・レコメンドなど「つなぐ基盤」の整備が中心でした。2025年はその基盤を使い、顧客ごとに何を提案し、どの接点で購入を後押しし、どう関係を継続するかが問われる段階に進んでいます。生成AIも、商品説明の作成や業務効率化にとどまらず、嶋田貴夫氏が紹介したように、サイト内検索やレコメンドを「人間らしくなめらかな」顧客体験へ近づける手段として位置づけられました。一方、具体的な売上やLTVの改善値を確認できない取り組みもあり、2025年の到達点は、AI・データ・OMOを実装し始めた段階から、EC固有の成果を継続的に検証する段階への移行です。

※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。

※本レポートは、ビズスタに掲載された「ECの成功事例」をテーマにした講演情報と、各社が公開している導入事例を元に傾向を分析しています。

編集者:ビズスタ市場調査チーム