社内DXの成功事例に関する調査レポート【2026年最新】

社内DXとは、社内の業務や情報の流れをデジタル技術で見直し、組織全体の生産性や意思決定の質を高める取り組みです。人手不足や業務の属人化、紙・手作業の負担が課題となるなか、システムを導入するだけでなく、現場に定着する運用へ変えることが求められています。

このレポートは、2020〜2026年開催の「社内DX」に関連する講演をもとに作成されています。提供された素材で確認できる2026年の掲載講演では、全社データ基盤の整備や現場課題を起点としたDX、AI活用が取り上げられています。講演者として確認できるのは、株式会社デンソーの鈴木絵里子氏(「デンソー データ基盤の軌跡 ~過去・現在・そして未来へ~」)、株式会社システナの水田潤氏(「自社の課題からはじめたデータドリブン経営と自律型AI活用への挑戦」)、株式会社NTTドコモの大澤理子氏、山縣芙美氏(両氏の講演「ドコモの新規事業創出プログラムの取り組みと、AIスピンアウト企業との連携事例」)です。通年の論調の変化や、指定された他の代表登壇者の役職・講演タイトルは、提供素材から確認できません。一貫する課題は、技術を実際の業務や価値創出につなげることです。近年は特に、AIを社内業務や新規事業に活用する議論が見られます。

社内DXシステムとは、社内のデータや業務プロセスをデジタル化し、共有・分析・自動化を支える仕組みです。素材では、株式会社システナのノーコードツール「Canbus.」による現場データの集約や、自律型AI「MAG」による仕様書作成の自動化が紹介されています。また、デンソーのデータ基盤ではSnowflakeを中核に、全社DXを支えるデータ活用が取り上げられています。

導入事例では、紙やExcelでの手作業、分散したシステム、属人化した運用を、データ連携や業務の電子化、自動化によって見直す変化が確認できます。近年は特に、AI-OCR(画像から文字を読み取る技術)による請求書の仕分けや、AIによる入金照合、勤怠・経費データの自動連携など、バックオフィス業務を効率化する事例が紹介されています。

2025年

課題は、ツールやデータが部署ごとに分かれ、使える情報が一部門にとどまることでした。紙やExcelを介した属人的な手順も残り、情報を集めても全社の判断や現場の仕事に活用しきれない状況が示されています。

解決策として、ビズスタに掲載された「第24回 DXフォーラム」の講演では、ドーモ株式会社の後藤祥子氏が、部門横断で共通のデータを使う基盤と、データを活用する人材の育成を提案しました。アビームコンサルティング株式会社の杉本慶氏、佐藤淳氏による講演では、非定型帳票や手書き文書を扱う方法として「LLM×AI-OCR」が示されました。いずれも解決の方向性であり、講演内の機能や構想を導入後の成果とは扱えません。

導入後の変化は、業務情報の共有と一元化に表れています。株式会社SmartHR(SmartHR(スマートフォン向けアプリ)、SmartHR)を導入したJR九州システムソリューションズ株式会社では、労務管理全体で年間約200時間の工数を削減し、高齢従業員が多い2,300名規模の会社では年末調整が150時間から69時間に短縮されました。フリー株式会社(freee会計、freee販売、freee工数管理)を導入した株式会社木村鉄工所では、バックオフィスの1人当たり残業が約50%減り、全社で最大約80時間の残業削減を実現しました。フリー株式会社(freee人事労務、freee会計)を導入した株式会社コイケでは、会計データを全社に共有し、部門長が損益や製造原価を確認できるようになりました。決算期の残業がほぼなくなり、部門のコスト意識向上も報告されています。

2024年と比べると、社内DXの評価軸に、手続きやシステムの効率化だけでなく、部門をまたいだデータの共有と、現場が数字を見て判断することが加わっています。また、FAQやナレッジ、非定型文書の活用など、情報の整備そのものも解決課題として浮かび上がりました。

2024年

この年に目立った課題は、全社DXの方針と現場の実務との隔たり、そして部署や業務ごとに分かれた仕組みでした。講演では、全社DXを現場に広げるマネジメント、内製開発やノーコードの活用、人材育成が取り上げられています。株式会社クレディセゾンの小野和俊氏は、内製開発と市民開発者の育成を含む5年間の取り組みを紹介し、アルティウスリンク株式会社の佐々木剛史氏は、社内ヘルプデスクの電話レス化を題材にAIとオペレーションを組み合わせる方向性を示しました。講演で示された取り組みは解決の方向性であり、ここでは導入後の成果とは区別します。

導入事例では、分散した業務をつなぎ、紙や転記を減らす変化が確認できます。フリー株式会社(freee人事労務、freee勤怠管理Plus、freee請求書、freee経理)を導入した株式会社ニッケ物流では、紙を介していた拠点間の情報連携をオンライン化し、月間約256時間の業務削減を実現しました。経理の月次締めは約半月から7営業日に短縮されています。フリー株式会社(freee人事労務、freee会計、freee支出管理、freee請求書)を導入した株式会社福徳不動産では、勤怠管理や給与計算を一貫して扱えるようになり、従来3名で担っていた実務が1名で回るようになりました。

2023年と比べると、課題解決の焦点が、個別の業務や書類処理のデジタル化だけでなく、会計・人事労務など複数領域の連携へ広がっています。効率化に加え、全社で使い続けられる業務フローや、管理者が分析・企画に時間を振り向ける体制づくりも評価されるようになりました。

2023年

課題として示されたのは、仕組みを導入しても部門を越えて使われないこと、システムのサイロ化、蓄積したデータや図面を活用できないことです。講演では、株式会社三菱総合研究所の柴田裕行氏がマルチクラウド環境での情報共有や運用管理の課題を取り上げ、株式会社アグレックスの井上日南子氏はローコード開発を社内DXに生かす方法を紹介しました。株式会社赤ちゃん本舗の伊藤竜氏は、総務・法務が主導する申請業務のデジタル化を解決の方向性として示しています。

導入事例では、全社での手続きや処理時間に具体的な変化が出ています。株式会社SmartHR(SmartHR(給与明細)、SmartHR(人事評価)、SmartHR(従業員サーベイ)、SmartHR(入社手続き・雇用契約)、SmartHR(文書配付)、SmartHR(申請・承認))を導入したアートセッティングデリバリー株式会社では、全国の管理者70名強の申請業務で年間約7,000時間を削減し、人事評価の完了期間は4か月から1か月に短縮されました。株式会社LayerX(バクラク申請)を導入した株式会社すむたすでは、AI-OCRの活用で申請者の入力工数を70%削減し、最短で申請から承認、振込まで10分で完了するようになりました。

2022年の講演で重心が置かれていたPoC疲れや人材育成、変革を担う組織づくりに対し、この年は、現場への定着やシステム間の連携、データ活用の具体的な設計が前面に出ています。解決策の議論が、変革をどう始めるかに加え、部門をまたぐ運用をどう成立させるかへ進みました。

2022年

課題は、DXプロジェクトが単なる効率化やPoCで終わること、社内文化や人材の壁を越えられないことでした。講演では、一般社団法人データサイエンティスト協会の佐伯諭氏が、PoCで終わらせないDXと社内人材育成をテーマに議論を提起しました。富士通株式会社の福田譲氏とパーソルプロセス&テクノロジー株式会社の成瀬岳人氏は、現場を主役とし全員参加で進めるDX人材育成を紹介しており、全社変革を支える人材・文化づくりが解決の方向性として示されています。

導入後の変化は、現場の申請と経理処理の双方に見られます。株式会社LayerX(バクラク経費精算)を導入した株式会社ペッカー精工では、紙の申請や証憑の保管、仕訳入力が不要になり、月次処理にかかる時間が約8時間から約1時間に短縮されました。総務業務は従来4名分を2名で回せるようになり、小口現金の取り扱い金額も約3分の1に減少しています。

2021年と比べると、紙や押印をなくす個別業務の改善だけでなく、PoCで終わらせず全社の変革へつなぐための人材育成や文化の変化が、より明確な課題になっています。ただし、導入事例で確認できる成果は、個別の業務時間や運用の改善であり、全社変革の達成までを示すものではありません。

2021年

紙の決裁や押印、複雑な社内規程が意思決定を遅らせ、コロナ禍のテレワークにも対応しにくいことが課題でした。講演では、兼松株式会社の寺崎誠司氏らが、社内規程を見直したうえでワークフローを再設計する方法を紹介しました。また、株式会社コラボスタイルの古市晋也氏は、脱ハンコとペーパーレスをワークフローから始める方向性を示しています。これらは講演で示された解決方法であり、導入後の成果としては扱いません。

導入事例では、紙の処理をデジタル化し、決算や人事労務のスピードを上げた例があります。マネーフォワード(マネーフォワード クラウド会計、マネーフォワード クラウド経費、マネーフォワード クラウド請求書、マネーフォワード クラウド債務支払)を導入した株式会社HITOMIOテクノロジーズでは、月次決算が1か月経っても終わらない状態から6営業日で対応できるようになり、経理メンバーの残業や休日出勤もなくなりました。株式会社SmartHR(SmartHR 年末調整、SmartHR 雇用契約・文書配付、SmartHR 人事労務レポート、SmartHR 従業員データベース、SmartHR 入社手続き)を導入した株式会社ウェルカムでは、入退社手続きの業務が約10分の1に短縮され、年末調整に必要な人員が3名から1名になりました。

2020年に示されたテレワークやクラウド化の必要性に対し、この年は紙の決裁・申請を電子化するだけでなく、決裁ルールや業務フローの再設計、内部統制や意思決定の速さまでが解決の対象になっています。

2020年

分析期間の出発点であるこの年は、社内に残るアナログな習慣と、コロナ禍で急に必要となったテレビ会議やテレワークへの対応が課題でした。講演では、株式会社デジタルシフトウェーブの鈴木康弘氏らが、データ活用やECだけでなく、社内のアナログな業務も含めて経営判断のあり方を考える必要性を示しました。これは方向性の提示であり、具体的な導入成果とは区別されます。

導入事例では、紙中心の労務手続きの削減や、クラウドを通じた会計情報の共有が進みました。株式会社SmartHR(SmartHR(入社手続き)、SmartHR(年末調整)、SmartHR(従業員情報申請)、SmartHR(雇用契約・文書配付)、SmartHR(従業員データベース))を導入した株式会社土屋鞄製造所では、入社手続き全体の工数を60%削減し、年末調整の工数も50%削減しました。年間約3万枚の紙を削減し、システムの見直しによる年間約400万円のコスト削減も報告されています。マネーフォワード(マネーフォワード クラウド会計)を導入した株式会社QTmediaでは、銀行口座やクレジットカードの自動連携、会計事務所とのクラウド上の連携により、テレワーク下でも決算業務を実施できるようになりました。

前年との比較対象となる素材がないため、2020年は比較を行いません。紙業務を電子化し、場所にとらわれず会計情報や手続きを扱える状態をつくることが、社内DXの出発点として示されています。

総括

社内DXの評価軸は、紙や手作業を減らすことから、業務の標準化・システム連携、全社的な定着へと広がっています。さらに、データを共有して現場の判断や経営の意思決定に生かすこと、活用を担う人材やナレッジを整えることも、解決の成否を測る軸になっています。

一方で、講演で示された全社変革やAI活用の構想と、導入事例で確認された業務時間の削減や情報共有の実績は区別が必要です。社内DXの成果を評価するには、仕組みの導入だけでなく、誰がどの情報を使い、業務や判断がどう変わったかを具体的に確かめることが重要です。

※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。

※本レポートは、ビズスタに掲載された「社内DXの成功事例」をテーマにした講演情報と、各社が公開している導入事例を元に傾向を分析しています。

※導入事例の参照:株式会社コイケ「2年の試行錯誤で辿り着いた、『任せる経営』の本質 物流業4代目がデータの民主化で促す意識変革」、株式会社木村鉄工所「技術と並ぶ、もう一つの継承。 創業90年の鉄工所がfreeeで実現した引き継ぎ書ゼロの『次世代に残すバックオフィスDX』 〜若手が安心して働ける体制へ〜」、JR九州システムソリューションズ株式会社「JR九州グループ13社が導入|シェアードサービス企業の実践例。スマホで高齢社員にも浸透」、株式会社福徳不動産「freee会計の導入で支出管理業務量を70%削減。経理人員半減のピンチを乗り越えた新たな業務フロー」、株式会社ニッケ物流「freeeで会計・人事労務をまとめて効率化し業務を月256時間短縮!バックオフィスから紙が消えた日。」、株式会社福徳不動産「業務効率化にともない属人化からの脱却を実現、従業員の働きやすさ向上!!」、アートセッティングデリバリー株式会社「大幅なコスト削減と従業員の利便性向上を実現。日本一効率的な人事総務へ」、株式会社すむたす「申請者の入力工数が70%減!不動産業界にこそ、バクラクをすすめる理由」、株式会社ペッカー精工「小口現金から立替経費精算への移行を実現!ものづくり企業がバクラク経費精算とともに進めたデジタル改革」、株式会社HITOMIOテクノロジーズ「経理の作業部分はどんどん省略化。1ヶ月経っても終わらなかった月次決算が6営業日になりました。」、株式会社ウェルカム「ペーパーレス化から定着率算出まで。バックオフィス強化の道のり」、株式会社QTmedia「コロナ禍でテレワークでの決算業務 可能にしたのはクラウド会計を用いた会計事務所との連携」、株式会社土屋鞄製造所「『未来の土屋鞄』を作るために。労務業務を超え、会社全体で活用」

編集者:ビズスタ市場調査チーム

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