離職対策とは、社員が働き続けやすい環境を整え、組織の知識や人材を維持するための取り組みです。採用難や人材流動化が進むなか、評価、キャリア、職場の関係性、介護や経済的不安など、複数の要因に向き合うことが企業の課題になっています。
このレポートは、2020〜2026年開催の「離職対策」に関連する講演をもとに作成されています。掲載された講演では、制度や待遇の整備に加え、組織状態や離職リスクをデータで捉え、AI(人工知能)も活用しながら、評価・キャリア・関係性を見直す議論へと注目点が移っています。川口佳子氏(ブックオフグループホールディングス株式会社・取締役/「ブックオフに学ぶEXサーベイ活用による組織変革〜社員1,700名超の人事戦略の可視化とデータ活用戦略〜」)、中村准子氏(筑波大学 働く人への心理支援開発研究センター・准教授/「職場の孤独による離職を予防する 『役立ち感』を満たす組織文化のつくり方」)、上田真由美氏(厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課長/「厚生労働省と考える『仕事と介護の両立支援』~社員のキャリアを継続するため、人事にできること~」)、山田博之氏(株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース・執行役員/「離職を防止するための評価制度の設計・運用ポイント」)、原陽輔氏(株式会社リーディングマーク・組織開発カンパニー マーケティング部 部長 / HRBP室 室長/「エース社員の離職を防ぐ!『EX(従業員体験)』で捉える離職のメカニズム」)が登壇しています。一貫しているのは、離職を個人の問題にせず、働く環境や成長機会、安心して相談できる組織づくりの課題として捉える姿勢です。近年は特に、AIによる離職リスクの可視化、EX(従業員体験)サーベイ、パルスサーベイ(定期的な簡易意識調査)、介護や金融面の不安への支援が増えています。
離職対策ソフトとは、従業員情報や評価、キャリア、意識状態を一元管理し、離職の兆候を把握して人事施策につなげるシステムです。代表例には、HRBrain タレントマネジメント(株式会社HRBrain)、HRBrain パルスサーベイ(株式会社HRBrain)、HRBrain 人事評価(株式会社HRBrain)、freee人事労務(フリー株式会社)があります。単体の機能としては、従業員情報の一元化、目標・評価管理、サーベイ、ストレス傾向の把握などがあります。周辺サービスでは、勤怠管理、給与計算、経費精算、福利厚生、会計連携などを組み合わせ、業務負荷や引き継ぎコストの軽減を支援します。
導入企業では、分散していた人材情報や業務データが整理され、面談や評価の質が高まり、不調や離職の兆候を早期に把握してフォローできる体制へ変化しています。近年は特に、パルスサーベイによる心身状態の把握、組織診断サーベイを起点にした人事施策、AIやシステム連携による業務自動化の事例が増えています。
『離職対策ソフト関連の講演者・各社の取り組み・成功事例がわかるセミナーをピックアップ』
過去の講演では、2025年に表孝憲氏(株式会社ミツカリ)が「性格特性の可視化とマッチングに基づく、離職防止と心理的安全性の実現」をテーマに、性格特性の可視化や人材マッチングによる離職防止について解説しました。株式会社HRBrainの飯島太斗氏は「離職防止の決め手はデータ活用!サーベイで見極める人材流出リスク」をテーマに、サーベイを活用した離職リスクの見極め方や具体的な対策を解説しました。株式会社SmartHRの白石晃子氏は「急な離職を防ぎ、離職率を抑える従業員の本音の集め方」をテーマに、従業員の本音を把握して職場環境を改善する取り組みを紹介しました。
2024年には、株式会社セールスフォース・ジャパンの浦和広氏が「従業員エンゲージメントを高め、社員が働きやすい環境を作るコミュニケーション」をテーマに、コミュニケーションによるエンゲージメント向上や離職率低下について解説しました。三和建設株式会社の森本尚孝氏は「入社3年以内の離職率ゼロ!『ひとに困らない経営』著者が語る“ひとづくり寮”で実現する人的資本経営」をテーマに、若手社員の定着を実現した教育寮の取り組みを紹介しました。
2023年には、サイボウズ株式会社の青野慶久氏が「サイボウズ 青野社長に聞く!『100人100通りの働き方』」をテーマに、多様な働き方の実践によって離職率を抑えた組織づくりについて解説しました。株式会社リンクアンドモチベーションの山中麻衣氏は「管理職6万名のデータを紐解く、離職率改善のための『マネジャー育成』の秘訣とは?」をテーマに、職場の人間関係を改善し、離職防止につなげるマネジャー育成について解説しました。
2022年には、株式会社KAKEAIの本田英貴氏が「10万回の1on1データから見えてきた、いま管理職が求められている対応とは」をテーマに、1on1データから見える部下のニーズや、エンゲージメント・離職防止につながる管理職の対応を解説しました。
2021年には、株式会社manebiの田島智也氏が「社員と組織の幸せを確立する共感オンボーディング」をテーマに、離職率を30%から3%へ改善したオンボーディングの考え方と、見える化・共創・仕組み化の進め方を紹介しました。
2020年には、LINE株式会社の武井淳氏が「顧客満足のカギは有人チャットとAIのハイブリッド!LINEのグローバル展開を支えるノンボイスサポート」をテーマに、AIと有人チャットを組み合わせてオペレーターの負担や離職率の課題を抑え、顧客満足度を高めた取り組みを紹介しました。
注目の導入事例は、株式会社ヒューマンアジャストが株式会社HRBrainを導入し、人事評価や従業員情報を一元管理するとともにサーベイ結果を活用した個別面談や経営層による動画回答を実施し、正社員の離職率を約18%から約13%へ低下させました。株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドは株式会社プラスアルファ・コンサルティングのタレントパレットを導入し、パルスサーベイや360度評価によって従業員のモチベーションや離職兆候を把握する体制を整えました。東レ株式会社は株式会社HRBrainのEX Intelligenceを導入し、サーベイ結果を現場へ迅速にフィードバックして、各部署の組織改善や離職・リテンション対策につなげました。株式会社ウェルカムは株式会社SmartHRを導入し、入退社手続きの電子化と人事労務レポートの活用によって業務を効率化し、定着率を把握しやすい人事基盤を整備しました。株式会社DRモビリティーズはfreee株式会社のfreee福利厚生 ベネフィットサービスを導入し、福利厚生の充実による従業員満足度の向上と人材定着、採用時の訴求力強化を目指しました。
※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。
※本レポートは、ビズスタに掲載された「離職対策の成功事例」をテーマにした講演情報と、各社が公開している導入事例を元に傾向を分析しています。
※市場環境の参照:厚生労働省公表資料
※導入事例の参照:株式会社ヒューマンアジャスト「離職率が18%から13%へ減少! 『顔が見える動画』でサーベイに応え、 接骨院業界を牽引する成長し続ける組織へ。」、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド「全国のプリンスホテルスタッフを『財』へ グローバル戦略とタレントマネジメントの進化」、東レ株式会社「現場主導の組織改善を図る。 従業員がいきいきと働くための取り組みとは」、株式会社DRモビリティーズ「目的は従業員満足度向上と採用PR!『freee福利厚生 ベネフィットサービス』で叶う理想の会社作り」、株式会社ウェルカム「ペーパーレス化から定着率算出まで。バックオフィス強化の道のり」
編集者:ビズスタ市場調査チーム