人的資本経営とは、人材を「コスト(費用)」ではなく価値を生み出す「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値の向上につなげる経営手法をいいます。大企業のリーダーや経営企画、人事・現場の担当者にとっては、人材戦略を経営戦略と結び付け、施策を現場で機能させることが重要な課題です。人材データを活用した配置・育成や、取り組みの成果を確かめる方法が注目されています。
このレポートは、2021〜2026年開催の「人的資本経営セミナーの講演者」に関連する講演をもとに作成されています。ビズスタに掲載された講演の注目点は、人的資本の開示や戦略策定から、現場への実装・成果検証へと移り、AI(人工知能)による意思決定支援へと広がっています。一貫しているのは、人材への投資を企業価値の向上につなげるため、戦略と現場の取り組みを結び付ける問題意識です。近年は特に、人材データを整備し、AIを採用・配置・育成などの意思決定に活用して成果につなげる議論が増えています。
人的資本経営を支援するシステムとは、従業員のスキルや経験、評価などの人材データを一元管理・分析し、経営戦略と連動した人材活用の意思決定を支える仕組み(IT基盤)のことです。人的資本経営のシステムを導入する際のポイントなど、国内外の最前線で活躍している企業トップや有識者を招いて講演されています。ビズスタに掲載されている講演では、入山章栄氏(早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール・教授)が「「知の探索」が拓く人的資本経営 〜多様性がイノベーションの連鎖を生む〜」を講演しています。井上英樹氏(株式会社カオナビ・執行役員CPO/プロダクトプランニング本部長)は「AIが人的資本経営の「武器」となる条件 ~ 意思決定の質を高め「成果」に繋げる方法とは ~」を取り上げています。足立朋子氏(テルモ株式会社・経営役員 チーフヒューマンリソースオフィサー(CHRO))は「世界160ヶ国で挑む、理念を軸にした人的資本経営の実践」をテーマにしています。宮田裕章氏(慶應義塾大学 医学部・教授)は「Better Co-Being:人的資本経営による経営の再起動」を講演しています。望月一矢氏(株式会社プラスアルファ・コンサルティング タレントパレット事業部・執行役員)は「人的資本経営を実現する真のタレントマネジメント ~生成AI×人材データ活用による人事戦略の実践事例~」を紹介しています。CPOは最高製品責任者、CHROは最高人事責任者を指します。
人的資本経営を支援するソフトは、人材情報を一元管理・分析し、経営戦略と連動した採用・配置・育成などの判断を支えるIT基盤です。HRBrain(株式会社HRBrain)は、人材データやキャリア意向を集約し、人材配置の検討に活用できます。ソフト本体ではタレントマネジメントを担い、周辺サービスとして人事評価、組織診断サーベイ、労務管理を提供します。サーベイ分析や面談記録の集約、年末調整のペーパーレス化にも活用されています。
人的資本経営システム関連の講演者・各社の取り組み・成功事例がわかるセミナーをピックアップ
過去の代表的な講演10社を、講演者・所属・肩書き・講演タイトルとともに紹介します。
【2025年】
東京都立大学大学院 経営学研究科・経済経営学部 教授の松田千恵子氏は、「グループ経営と事業ポートフォリオマネジメント」で、グループガバナンスや全社戦略の高度化に加え、本社の役割や人的資本を活かす取り組みについて解説しました。
一橋大学CFO教育研究センター長・人的資本経営コンソーシアム会長の伊藤邦雄氏は、「人的資本経営~TransitionからTransformationへ~」で、経営戦略と人事戦略の連動や、企業文化の醸成、自律的なキャリア形成など、人的資本経営を進化させる実践的な視点を紹介しました。
アサヒグループホールディングス 取締役 兼 執行役 Group Chief People Officerの谷村圭造氏は、「ありたい企業文化、余白がもたらす成長 アサヒグループHDの人的資本経営の今」で、職場の対話を通じて企業文化や組織のあり方を見直す取り組みを紹介しました。
【2024年】
早稲田大学大学院 経営管理研究科・早稲田大学ビジネススクール 教授の入山章栄氏は、「世界の経営学から見る、人的資本経営への視座」で、世界標準の経営学を踏まえ、日本企業のイノベーション創出と人的資本経営について解説しました。
三井化学株式会社 取締役 専務執行役員 CHROの安藤嘉規氏は、「企業文化を活かした三井化学の人材戦略とDE&I」で、同社の歴史を背景に育まれた企業文化と、経営戦略に連動する人材戦略、DE&I施策について紹介しました。
日本電気株式会社(NEC)執行役 Corporate EVP 兼 CHRO 兼 ピープル&カルチャー部門長の堀川大介氏は、「危機を経て『選ばれる会社』となるための人・カルチャーの変革 NECの人的資本経営」で、人事制度改革や多様な人材の登用を通じて、社員の力を引き出す組織づくりを解説しました。
【2023年】
ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長の足立竜治氏は、「ソフトバンク流 人的資本経営」で、人と事業をつなぎ、社員一人ひとりの潜在能力を引き出す人材戦略や、生成AIに関する取り組みを紹介しました。
双日株式会社 常務執行役員 人事担当本部長の橋本政和氏は、「人的資本経営を実現するマネジメントサイクル実践事例」で、人材KPIや施策を通じて人材の力を価値創造につなげる取り組みについて解説しました。
【2022年】
オムロン株式会社 執行役員常務 グローバル人財総務本部長の冨田雅彦氏は、「人材の価値を引き出す〜人的資本経営の実現に向けたステップとは〜」で、人材情報の可視化や人事改革の課題を踏まえ、人的資本を経営戦略に活かすための考え方を紹介しました。
【2021年】
ロート製薬株式会社 取締役 人財・WellBeing経営推進本部 E.Designerの髙倉千春氏は、「持続的企業価値を創造する人的資本経営の実現に向けて」で、経営戦略と人材戦略を連動させ、人的資本経営を実装するための課題や取り組みの方向性を議論しました。
事業内容や置かれた環境によって有効な打ち手は異なりますが、本レポートをアイデアのヒントとして、人的資本経営システムの導入を成功させる一助としていただけますと幸いです。
※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。
※本レポートは、ビズスタに掲載された「人的資本経営セミナーの講演者の成功事例」をテーマにした講演情報と、各社が公開している導入事例を元に傾向を分析しています。
編集者:ビズスタ市場調査チーム