若手採用の成功事例に関する調査レポート【2026年最新】

若手採用とは、将来の中核人材となる新卒・若手層を採用し、入社後の成長と定着まで設計する取り組みです。労働力人口の減少や採用競争の激化により、募集を出しても人が集まらず、採用できても早期離職で人材が蓄積しないことが企業の課題になっています。採用条件だけでなく、仕事との接点、育成、キャリア形成を一体で見直す必要があります。

このレポートは、2021〜2024年開催の「若手採用」に関連する講演をもとに作成されています。関心は、若手を集める採用広報から、入社後の定着・育成・活躍までを含む人材設計へ移っています。全期間を通じて、採用難と早期離職によって将来の人材が蓄積しない問題が共通しています。近年は特に、Z世代(主に若年層を指す呼称)の価値観に合わせた採用、オンボーディング(入社後に職場へ適応する支援)、報酬や職域の設計が具体的に議論されています。

採用競争から、入社後の定着と成長までを一体で設計

2024年に顕在化したのは、若手を採用できない問題と、採用できても定着しない問題が分離できなくなっている状況です。掲載された講演では、新卒採用の難易度が上がり、中途採用で若手を確保する企業が増えている一方、中途採用者の2年以内の離職率は30%を超えると言及されています。また、就社意識の薄れや「リアリティショック」、入社後に早期離職を選ぶ問題も示されました。IT・DX人材では正社員採用の競争が激しく、建設業では採用と定着の難しさが課題です。採用市場で選ばれるだけでなく、入社後に期待とのずれを小さくし、成長を実感できる環境をどうつくるかが問われています。

解決方法として示されたのは、採用、配属、育成、報酬を別々に扱わない設計です。高橋政成氏は、入社から3年間に定着・活躍した若手の成長過程を調べた「ファーストキャリア調査」をもとに、新人育成とキャリア開発を考える方向を示しました。Z世代については、曽和利光氏らが、失敗を恐れるといった世代論で一括りにせず、個人ごとの価値観やキャリア観を踏まえて向き合う必要性を論じています。採用後は、世代別の離職要因分析とオンボーディング、若手が専門性を伸ばせる職域設計、賃上げや福利厚生を含む報酬戦略が打ち手として挙げられました。峰岸啓人氏が紹介した株式会社サイバーエージェントの講演では、伸びるエンジニアを見極める採用基準と、若手の成長を促す抜擢文化が解決の方向性として示されています。建設分野では、田辺直子氏が、ITとコミュニケーションで現場とオフィスをつなぐ「建設ディレクター」を、若手採用やデジタル人材育成につなげる考え方を説明しました。

実際の変化については、2024年の掲載情報では、導入事例として複数社の定量成果が確認できるわけではありません。そのうえで、森本尚孝氏は三和建設株式会社の取り組みとして、採用と定着を目的にした「ひとづくり寮」を紹介し、7年間で社員数が2倍近くに増え、新卒社員の入社3年以内の離職率が2020年採用以降「ゼロ」を継続していると説明しています。これは、住環境を含む若手同士のつながりや育成の場を実装した例として読めますが、講演で示された同社の成果であり、他社にも同じ結果が出るとまではいえません。株式会社サイバーエージェントの採用・育成戦略や「建設ディレクター」も、掲載情報上は方法の紹介が中心で、導入後の定量成果は確認できません。

2023年との違いは、若手を採用する施策だけでなく、採用後3年間の成長、離職要因、職場への適応までを連続した課題として扱う議論が前面に出た点です。2024年の示唆は、採用数を増やすことにとどまらず、若手が何を期待して入社し、どのような役割と支援があれば残るのかを、採用基準や現場運営に反映することにあります。

2023年

若手採用をめぐる課題は、候補者を集めることから、採用競争のなかで選ばれ、入社後も活躍してもらうことへ広がっています。人事院の川本裕子氏は、国家公務員について採用試験への応募者の減少と若手職員の離職増加を挙げ、人材確保が危機的な状況にあると説明しました。民間でも、有効求人倍率が高止まりするなか、若手の優秀人材をどう集めるか、採用担当の運用工数をどう抑えるかが課題として示されています。

解決方法としては、企業が一方的に情報を発信するのではなく、候補者が知りたい情報を開示し、選考中の体験そのものを設計する方向が示されました。株式会社ワンキャリアの矢野優歌氏は、社員の声や説明会動画などを活用する「オープンな採用」の情報発信を取り上げています。レバレジーズ株式会社の中西優夏氏は、Z世代の学生を選考前・選考中などのプロセス別、さらに5つの学生タイプ別に捉え、コミュニケーションやフィードバックを変える方法を紹介しました。学歴ではなくポテンシャルで若手を確保する考え方や、20代を早期に事業責任者として育てる考え方も、採用後の成長まで見据えた方向性として示されています。

一方、対象年の素材には若手採用に関する導入事例がなく、導入後の定量成果は確認できません。したがって、情報発信の改善、候補者タイプ別の面談、ポテンシャル評価、柔軟な働き方などが解決方法として提示されたことは確認できますが、それによって応募者数、内定承諾率、若手の定着率がどこまで変わったかは判断できません。人事院の改革についても、官民の人材流動性向上、人材マネジメントの改善、フレックスタイムなどの制度改革が取り組みや目指す方向として説明されていますが、若手採用に関する導入後の成果数字は示されていません。

2022年と比べると、課題の中心が入社後のエンゲージメントや早期離職の抑制から、採用市場で候補者に選ばれるための情報開示と選考コミュニケーションへ移っています。採用の評価軸に、候補者の質だけでなく、企業理解を深める発信、学生ごとの対話、若手が活躍する将来像の提示が加わった年といえます。

2022年

2022年には、若手を採用できても、入社後に期待とのずれが生じ、定着や成長につながらないことが課題として顕在化しています。株式会社NEWONEの阿部真弥氏は、新入社員の就社意識が大幅に低下している人材流動化時代を前提に、「自社に入って良かった」と思ってもらう育成を課題に挙げました。高橋政成氏も、リアリティショック、育まれない主体性、若手の離職を課題として示しています。さらに、60%の就活生が転職を前提に就職するという講演内容からは、採用時点での長期定着を当然視しにくい環境が示されています。

解決方法としては、採用と入社後育成を切り離さず、候補者・従業員の体験を一続きで設計する考え方が広がりました。株式会社NEWONEは、Z世代の特徴を踏まえ、入社後よりもエンゲージメントが高まる状態までを4Stepに分けた育成設計を示しています。高橋政成氏は、内定者から始める20代のキャリア開発や、入社後3年間の人事施策を取り上げました。株式会社人材研究所の曽和利光氏は、理念共感や雇用条件だけでなく、若手が不安や失敗を抱え込まないための心理的安全性を、採用から定着までの若手の体験に影響する要素として提示しています。

対象年の素材には若手採用に関する導入事例がなく、導入後の定量成果を確認できません。GMOアドパートナーズ株式会社の森啓人氏の講演では、新卒1年目を重要な期間と捉えた育成・定着の取り組みが具体例として紹介され、成果を挙げてきたとされていますが、若手採用に関する数値や導入前後の比較は示されていません。したがって、4Stepの育成、内定者からのキャリア開発、心理的安全性、候補者体験の改善は解決方法として整理できますが、採用数や離職率がどこまで改善したかは判断できません。

2021年との違いは、採用前後のキャリア設計という問題意識に加え、入社後の体験を組織全体で管理する視点が明確になったことです。2021年は配属ギャップや戦力化までの時間が主な論点でしたが、2022年は候補者体験、従業員体験、心理的安全性、Z世代のエンゲージメントが採用・定着を左右する評価軸として示されています。

2021年

分析期間の出発点である2021年には、日本型の一括採用が若手の採用後の活躍まで十分につながっていないことが課題として示されています。小山健太氏と高橋政成氏は、一括採用のメリットを認めつつも、配属ギャップや戦力化に時間を要する点を課題に挙げました。世代観の変化を踏まえ、採用だけでなく育成にも変化が必要だという問題意識が、若手採用の前提として置かれています。

解決方法として示されたのが、「育てる採用」と内定者から始めるキャリア開発です。採用広報、インターン、内定者フォロー、新卒育成を個別の施策として扱うのではなく、内定前後からキャリア形成を支援する一連のアプローチとして設計します。主体的に活躍している若手社員への調査や事例を基に、若手が入社後にどのように自律していくかを採用段階から考える方法が紹介されました。

対象年の素材には導入事例がなく、若手採用に関する導入後の定量成果は確認できません。講演では、配属ギャップや戦力化の遅れに対応する考え方や、採用広報から新卒育成までを見直す方向が示されていますが、応募者数、入社後の活躍、定着率などの成果数字は示されていません。したがって、この年は実績の比較よりも、採用を入社時点で終わらせず、内定前後のキャリア開発まで含めて設計するという基本的な解決方向が提示された年と整理できます。

総括

2021年は、若手採用の評価軸が「採用できたか」だけでなく、配属後に活躍できる状態をどうつくるかへ広がり始めました。2022年には、候補者体験、従業員体験、心理的安全性を通じて定着までを設計する視点が加わり、2023年には、情報開示や候補者ごとの対話によって、採用市場で選ばれる力そのものが新たな評価軸になっています。

ただし、対象期間の素材では若手採用に関する導入事例と導入前後の定量成果を確認できないため、示された方法が実際に採用成果へどこまで結びついたかは判断できません。評価軸が採用人数から、候補者体験、入社後の成長、定着、そして企業からの情報発信まで広がった一方、成果を検証する数値の提示は今後の課題として残っています。

※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。

※本レポートは、ビズスタに掲載された「若手採用の成功事例」をテーマにした講演情報と、各社が公開している導入事例を元に傾向を分析しています。

※市場環境の参照:人事院公表資料

編集者:ビズスタ市場調査チーム