このレポートは、2021〜2026年開催の「EC」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演の関心は、コロナ禍での販売基盤拡充から、データ統合・OMO、顧客体験とAIを用いた収益化へ移ってきました。一貫しているのは、オンラインと店舗を横断して顧客との関係を築き、EC事業の持続的な成長につなげる問題意識です。近年は特に、生成AI(文章・画像などを生成する人工知能)と顧客データを組み合わせた体験設計、基幹を残したEC基盤刷新の議論が増えています。
2026年(次世代コマース基盤とデータ分断の解消)
ECでは、販売チャネル、顧客接点、基幹システムが個別に発展した結果、顧客・商品・在庫データの分断が事業運営上の課題となっています。顧客は店舗、公式EC、モール、SNSなどを行き来するため、接点ごとに異なる体験や情報を提示しない設計が重要になります。クラウド型のコマース、顧客エンゲージメント、データ基盤を組み合わせる技術選択も広がっています。一方で、大規模な基幹刷新には費用、移行リスク、現場負荷が伴い、既存資産を生かした段階的な移行が求められます。こうした背景のもと、ビズスタに掲載されている講演では、株式会社ハックルベリーの安藤祐輔氏と佐藤環氏が、Shopify、Braze、Databricksを含む最新システムのアーキテクチャを題材に、組織、人材、ツール、データの最適な組み合わせを考察しています。佐藤環氏、飯塚泰輔氏、中谷宏之氏、安藤祐輔氏による講演では、ラオックスECストラテジー株式会社と株式会社エーアンドエスの実践を基に、多ブランドECで生じる顧客データの分断を、基幹を刷新せずに解く現実的な方法が論点です。論調は、単なるECサイト更改ではなく、既存の基幹を維持しながら顧客体験を取り戻すための次世代EC基盤設計にあります。
2025年(AI・OMO・CRMによる顧客体験の収益化)
ポストコロナのECでは、集客量の拡大だけでは成長を維持しにくく、既存顧客の理解、再購買、ブランドとの関係性が重視される局面です。生成AIの実装が進む一方、検索、レコメンド、接客を機械的な自動化で終わらせず、自然な体験に変えることが課題になります。物流の労働力不足、決済不正、越境取引の複雑さも、販売機会と収益性を左右する要因です。店舗とECを統合するOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインを融合する考え方)は、データ統合だけでなく組織横断の運営課題として扱われています。こうした背景のもと、ビズスタに掲載されている講演では、株式会社ZOZOの山口琢也氏とLINEヤフー株式会社の小野雄紀氏が、年間購入者数1,200万人超の「ZOZOTOWN」におけるCFM(Customer Friendship Management)と、データ、LINE、AIを通じた顧客との関係づくりを扱っています。株式会社スヴェンソンは株式会社電通デジタル、株式会社プレイドとともに、店舗とECのデータを統合し、KARTEで一貫したデジタル接客を実現したCXプロジェクトを紹介しています。株式会社ゴールドウインの梅田輝和氏も、店舗・ECスタッフがワンチームとなる顧客中心OMOを論点に据えました。株式会社コーセーの命尾泰造氏は、DECORTÉのブランド公式ECを例に、顧客インサイトからブランド価値を高める体験設計を示しています。株式会社ブレインパッドの嶋田貴夫氏は、サイト内検索、レコメンド、ポップアップを、人間らしくなめらかな顧客体験へ変える生成AI活用を提起しました。株式会社資生堂の森田慶仁氏は、2024年7月に刷新した資生堂オンラインストアを題材に、ユーザーファーストの体験創造と超短期・大規模開発を語っています。販促・運営面では、カンロの武井優氏が「KanroPOCKeTオンラインショップ」のファン化とEC事業の成長戦略を、ダイレクトイシイの萩原俊彦氏がイシイ食品公式オンラインストアのCRM戦略と業務改革による通販リピート売上3倍を扱っています。頻出するShopifyは、Shopify Japanの熊澤絵那氏による導入価値の解説、飛躍の明石健夫氏による売上を10倍にした施策、生活の木がShopifyとPaidで年商5,000万を実現した事例など、越境ECとBtoB ECの共通基盤として位置づけられています。
2024〜2023年(データ統合からCXコマースと生成AIへ)
生活者の購買行動がオンラインと店舗の間を横断するようになり、ECは独立した販売チャネルではなく顧客接点全体の一部として捉えられるようになりました。コロナ禍で拡大したEC市場が平常化する中、新規顧客獲得だけに依存せず、LTV(顧客生涯価値)やリピート率を高める必要性が強まりました。Cookie規制やプライバシー保護の流れは、外部データよりも自社で得た顧客データを活用する重要性を高めています。生成AIへの期待が急速に高まる一方、実装にはデータ品質、運用体制、顧客にとっての有用性を見極める課題があります。サイト性能、不正注文、セキュリティも、体験品質を支える経営課題として扱われています。こうした背景のもと、ビズスタに掲載されている講演では、資生堂が繰り返し重要な事例として登場します。資生堂インタラクティブビューティー株式会社の中條裕紀氏は、店舗・EC・ブランド別に分かれていた会員サービスを「Beauty Key」に集約し、顧客IDを一元化した取り組みと、それを実行する人材像を語りました。資生堂ジャパン株式会社の松山美紀氏は、一人ひとりにブランドの本質を最適に届ける顧客体験を論点に置き、2024年には小椋一平氏がEC、OMO、AIを含むデジタル改革と組織・人財育成を扱っています。株式会社アーバンリサーチはKARTEを用いて店舗・ECデータを統合し、重要顧客「SBEV」を発見した事例を紹介しました。株式会社サンドラッグの田丸知加氏は、AWS、Shopify、Salesforce、Tableauで構築したOMO基盤を通じ、店舗とECを融合するCXを示しています。データXの福井和典氏は、CDP(顧客データ基盤)とメール、LINE、Web接客を組み合わせ、平均購入単価1.3倍、クロスセル率1.8倍、F2転換率1.7倍、LTV120%向上といった事例を複数の掲載講演で提示しており、顧客育成を数値で管理する論調を代表します。株式会社ヤプリの金子洋平氏と神田静麻氏は、ECのアプリ経由売上50%以上、MAU(月間アクティブユーザー数)40%以上の事例を示し、アプリを店舗・EC・顧客をつなぐハブとして位置づけました。生成AIでは、ビービットの藤井保文氏と生田啓氏がChatGPT時代のEC運用を問題提起し、シルバーエッグ・テクノロジー株式会社の園田真悟氏は統合データとAIによるCVR3倍を掲げています。2024年には株式会社出前館の織笠愛生氏がVertex AI Searchへの検索エンジン刷新における工数、費用、CTRへの効果を扱い、DATUM STUDIO株式会社の朝倉高也氏は商品検索への生成AI適用を議論しました。
2022〜2021年(需要拡大への対応とEC運営基盤の整備)
この時期は、コロナ禍を契機とした非接触購買の拡大により、企業がECの販売能力、在庫、配送、顧客対応を急速に整備する必要があった時期です。実店舗の制約を補うだけでなく、EC、アプリ、SNS、LINEを通じて顧客と接点を持つオムニチャネル化が進みました。新規参入と広告競争の激化により、CPA(顧客獲得単価)を抑え、既存顧客のLTVを引き上げるCRMへの関心も高まりました。物流負荷、システム可用性、個人情報・決済情報を狙う攻撃は、EC成長に伴う構造的な課題でした。電子帳簿保存法対応など、取引データを適正に扱う業務基盤づくりも求められています。こうした背景のもと、ビズスタに掲載されている講演では、株式会社アダストリアの田中順一氏が、会員1200万人超の自社ECデータと店舗スタッフによるオンライン接客を用いた「情緒的な」OMOストアの展望を示しました。株式会社パルの堀田覚氏はPAL CLOSETを運営する組織として、データ活用を文化にする組織づくりとデータ基盤構築を取り上げています。イケア・ジャパン株式会社のペトラ・ファーレ氏は、アプリを活用したEC拡充、店舗連携、オムニチャネル化とサステナビリティを結び付けました。CRMでは、E-Grantの古賀達郎氏、新井七彩氏がLTV向上とリピート率135%を実現したLINE施策を扱い、株式会社データXの福井和典氏はノーコードのCDP構築とMA活用によるクロスセル率1.8倍の事例を紹介しています。決済と安全性では、アマゾンジャパン合同会社の井野川拓也氏がAmazon Payによる自社ECの購買体験改善を、株式会社ネットプロテクションズの秋山瞬氏と長谷川智之氏が後払い決済、決済最適化によるカゴ落ち防止を論じました。株式会社マクニカの掛谷勇治氏はPCI DSS v4.0で要件が新設されたWebスキミング対策を、ヤフー株式会社の藤田智子氏らはECでの不正決済を含む不正利用対策を扱っています。物流面では、ヤマト運輸株式会社の齊藤泰裕氏が配送環境の変化とデジタル戦略を、株式会社日立物流の天春洋平氏と田中佑輔氏がSCDOSによる物流ネットワーク最適化を紹介しました。システム面では、GMOメイクショップ株式会社が「MakeShop by GMO」のリプレース、GMOペパボ株式会社が「カラーミーショップ byGMO」の可用性向上を扱い、需要増への耐性を整える技術論が展開されています。
全体を通じて、掲載講演ではShopify、KARTE、CDP、LINE、Amazon Payが、販売基盤、顧客理解、接客、決済をつなぐプレイヤーとして頻出します。ECは単なるオンライン販売ではなく、店舗、物流、データ、組織、セキュリティを横断して顧客体験と収益性を設計する領域として、一貫して位置づけられています。
※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。
編集者:ビズスタAI編集チーム
データソース:ビズスタ掲載中のECの調査レポート関連の講演情報
コロナ禍によって、顧客体験はより一層オン/オフを融合したものに変わり、ブランド側にはそれに対応する俊敏性と変化対応力を備えたデジタル基盤が求められます。 ECからの店舗在庫引き当ての仕組みと店舗評価の両立、チャネルに依存しないバックエンドプロセス、商品情報基盤と顧客情報基盤の在り方、IT部門やSIベンダーに頼らずに顧客エンゲージメントを速やかに高めるための仕組み等、そこには企業の組織やシステムに関する様々な検討ポイントが存在します。 本セッションでは、DXをその第一人者として提案し続けてきたSAPの経験に基づいて、そのポイントをご紹介します。
400社以上が採用するビジュアルマーケティングプラットフォームvisumo(ビジュモ)はUGC、アンバサダー、スタッフ、動画コマース、SNSといった様々な切り口で写真や動画(ビジュアルデータ)を集め、ブランドがオンライン・オフライン共に有効活用できる次世代ソリューションを提供しています。 パンデミックで変わりつつあるECサイトの在り方に未だ正しい定義はありませんが、未来を見据えた各社が挑戦を続けている施策について解説します。
ECサイトにおいて、CVR目標を達成し続けている企業が全契約数の90%以上もいる秘訣は何か?それは、Web上でもリアルの店舗と同様に質の高い接客・おもてなしを行う点にあります。顧客の行動心理を深く理解し、適切にコミュニケーションを図ることは、顧客満足度だけではなく成果の向上にもつながります。本来のCXの観点にもとづいて実行したシナリオ数が業界最多であることを自負するSprocketが、ECサイトでの「売れるWeb接客」の鉄板シナリオを余すことなくご紹介します。
新規顧客の獲得効率の向上は、コロナ禍においてどの企業も取り組むべき至上命題です。 しかし、そもそもどの施策が新規顧客の獲得に繋がっているか可視化できていない、可視化できていたとしても、具体の施策に落とせていない企業がほとんどです。 そのような状況下でも、ROASを始めとする新規顧客獲得効率を劇的に改善したアパレル企業の事例を取り上げ、同社のデータ分析と、分析をもとにしたマーケティング施策を公開します。
ビジネスのグローバル化に伴い、各地域における顧客接点としてグローバルECサイトの重要性が増しています。 そうした背景がある中、多くの運用の現場では人的リソースが限られており、多言語化対応の不足が顕在化している現状があります。 本セッションでは、ECサイトに効率的な多言語化運用体制を構築するためのベストプラクティスや、大手アパレル企業のWOVN.io活用事例についてご紹介させて頂きます。
データを集め・見て・使うプロセスにおいて、多くの企業が想定した成果が出ないことに悩んでいます。大手EC企業を中心に約1万社のマーケティングを支援してきたエンバーポイントが、成功/失敗のポイントをお伝えします。アプリを含むオムニチャネルなどの実例もご紹介いたします。
ECの売り上げ拡大においては獲得後の顧客をいかに定着させるかが重要です。様々なCRM施策を試してみるもなかなか継続率が上がらず、結果としてクーポンやキャンペーン頼みとなっているという悩みを多く聞きます。 本セミナーでは、行動データから顧客の「状況」を捉え顧客体験の向上により成果を挙げている企業事例を紹介しながら、ロイヤルカスタマー育成に向けた成功のポイントをご紹介します。
2021年4月、千葉・埼玉・愛知に新業態ストア「ONWARD CROSSET STORE」をオープンしたオンワード樫山。 長年培ってきた実店舗のポテンシャルを活かしつつ、デジタルやECの力をかけ合わせて行う新たな挑戦と、そこから得た発見・進化の道筋を紹介します。
アイスタイルでは化粧品クチコミメディアの@cosme を中心に、EC サイトや小売店などの事業展開を行い、会員様の行動を共通ID で管理しています。また、そのデータを活用したマーケティングソリューションを化粧品ブランド様に提供しています。本セッションではTableau を導入後の浸透の取り組みのご紹介、今後の企業間データ連携の展望をお話しさせていただきます。
アイスタイルでは化粧品クチコミメディアの@cosme を中心に、EC サイトや小売店などの事業展開を行い、会員様の行動を共通ID で管理しています。また、そのデータを活用したマーケティングソリューションを化粧品ブランド様に提供しています。本セッションではTableau を導入後の浸透の取り組みのご紹介、今後の企業間データ連携の展望をお話しさせていただきます。