このレポートは、2019〜2026年開催の「新規事業」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演の関心は、社内起業制度の整備から、DX・生成AIを用いた探索、外部連携と事業の実装・成長管理へ移っています。一貫しているのは、既存事業の資産を生かしながら非連続な成長を生む仕組みをどう構築するかという問題意識です。近年は特に、生成AIとスタートアップ共創を用い、PMF(製品が市場に受け入れられた状態)までの速度を高める議論が増えています。
2026年(AI・共創を実装と事業成長へつなぐ)
生成AIの普及により、事業アイデアの探索、顧客仮説の検証、業務設計の速度を高めることが企業課題となる時期です。一方で、技術を導入するだけでは事業化に至らず、意思決定、初期顧客の獲得、開発・営業機能の確保が必要になります。大企業とスタートアップの連携では、意思決定速度や目的の違いをどう調整するかが問われています。研究成果や社会課題を事業に転換する際には、資金、人材、顧客、自治体を含むパートナーの組成も重要です。こうした背景のもと、ビズスタに掲載されている講演では、新規事業を制度論だけで終わらせず、AI、CVC、カーブアウト、官民共創を組み合わせて実装する論調が中心です。株式会社NTTドコモの大澤理子氏、山縣芙美氏は、「docomo STARTUP」におけるAI活用と、2024年4月にスピンアウトした株式会社SUPERNOVAとの共創を取り上げました。永渕貴煕氏の講演は、生成AI×海外スタートアップDBによって既存事業の延長ではないテーマを探索する視点を示しています。武田裕子氏、染田貴志氏、加藤崇介氏は、VCM(ベンチャークライアントモデル)で導入速度を上げ、M&A・スイングバイIPOまでを見据える「分離設計」を論点に置きました。髙橋佑介氏が推進する森永製菓株式会社の「ミテツグ」と、吉野淳一氏のみずほリース株式会社の事例を交えたセッションでは、アイディエーションからローンチ、PMFまでを一貫して進める型を議論しています。ソニーグループ株式会社の野村憲治氏は、Sony Acceleration Platformの約1,000件の支援実績を基に、アイデア創出から事業化までを支える仕組みを提示しました。日比野由空氏は2000社以上の相談実績を背景に、オープンイノベーションが事業創出に至らない構造的問題と、企業ごとに異なる制度設計の必要性を扱っています。
2025年(ポートフォリオ運営と顧客起点のグロース)
不確実性が続く市場環境では、新規事業を単発の挑戦ではなく、投資・継続・撤退を含む事業ポートフォリオとして運営する必要性が高まります。人材採用が難しい環境では、社内人材の育成だけでなく、専門性を持つ外部人材を柔軟に活用する選択肢も重視されます。DXは既存業務の効率化段階から、データを通じた顧客体験の設計や新たなサービスの成長へと論点が広がります。既存事業と新規事業の資源配分をどう変えるかは、経営と現場の優先順位を調整する課題でもあります。こうした背景のもと、ビズスタに掲載されている講演では、事業化後のグロース、撤退基準、人材・組織の再配置を扱う内容が目立ちます。内田有希昌氏は、第8回 新規事業フォーラムで、個別案件の成功だけでなく、「良い着工」と「良い撤退」を連鎖させて新規事業ポートフォリオを充実させる必要性を語りました。野中利明氏は、全日本空輸株式会社の新規事業提案制度「がっつり広場」を紹介し、「飛行機の墓場ツアー」「DXコンサル事業」を含む30件程度の提案実績を示しています。松坂拓樹氏、上野正彦氏、小林正宜氏らは、大阪ガス株式会社の冷蔵おかず定期便『FitDish』、プリント管理アプリ『プリゼロ』を事例に、データ活用による顧客体験(CX)の向上と新規事業の成長を扱いました。川本亮氏は、事業環境が急変する危機感を起点に、株式会社JR西日本イノベーションズがCVCを通じて新規事業と生産性向上を狙う構図を説明しています。舟生健太郎氏は、ヤマハ発動機株式会社が経営戦略本部に新事業開発機能を置き、オープンイノベーションを活用して非連続な事業創出を加速する方針を取り上げました。川口紗弥香氏による富士通株式会社の「Fujitsu Innovation Circuit」、俵輝道氏による太陽ホールディングス株式会社の「攻めのDX」も、社員の挑戦とデジタル変革を事業創出へ結び付ける事例です。
2024年(生成AI・知財・制度設計を事業開発に組み込む)
生成AIが事業開発の実務へ入り始め、調査、アイデア発散、仮説検証、開発の効率化に対する期待が強まった時期です。同時に、AIが導く事業機会を競争力に変えるには、顧客理解、知的財産、法規制、品質管理を早期から設計する必要があります。大企業では、社内起業を促す制度を設けても、本業との資源配分や経営との接続が不十分で、事業化が停滞する課題が意識されます。スタートアップとの協業やM&Aも、新規事業の手段として定着する一方、買収後・協業後に価値をどう実装するかが問われます。こうした背景のもと、ビズスタに掲載されている講演では、生成AI活用と事業開発の基盤整備を並行させる議論が展開されています。吉田順氏、小栗伸氏は、株式会社日立製作所と株式会社NTTドコモの事例を通じ、生成AIによる既存ビジネスの効率化、アイデア創出・仮説検証の高速化、新ビジネスモデルへの影響を扱いました。森一真氏、大原康路氏は、生成AIのリサーチ・創発能力を活用し、数万のアイデア探索から勝ち筋を見つける方法を提示しています。内保徹平氏は、新規事業特化型AIサービス『HASSAN』を題材に、生成AIのトレンドと未来を語りました。永井歩氏は、技術起点の事業開発で優先順位が下がりがちな知財を、研究開発、事業化、スケールを通じた「攻めの特許戦略」として位置付けています。羽藤耕一郎氏は、味の素株式会社の一食完結型宅配冷凍弁当「あえて、」が起案から1年でリリースに至ったプロセスを紹介しました。渋谷昭範氏、南侑里氏は、株式会社リクルートの「Ring」における起案通過後の推進と撤退、再起案を扱い、撤退を学習として次の挑戦に接続する視点を示しています。磯和啓雄氏が繰り返し登壇した株式会社三井住友フィナンシャルグループの事例では、非金融領域のデジタル子会社が10社を超える点を挙げ、金融サービスの枠を越えたデジタル新規事業の展開を語っています。
2023年(組織文化と社内起業を事業創出の基盤にする)
市場変化の速度が上がり、既存事業の延長だけでは中長期の成長を描きにくいという問題意識が強かった時期です。DX、Web3、メタバース、データ活用などの技術テーマが新たな事業機会として注目される一方、技術先行では顧客価値や収益化が定まらないリスクも意識されました。新規事業を継続的に生むには、担当者個人の熱意に依存せず、人材育成、評価、挑戦を許容する組織文化を整える必要があります。大企業とスタートアップの協業では、投資やイベント参加ではなく、双方が事業上の成果を得る関係設計が課題となります。こうした背景のもと、ビズスタに掲載されている講演では、社内起業家の育成、組織能力、オープンイノベーションを新規事業の土台として捉える論調が中心です。中西勇太氏は、トヨタ自動車(株)の事業開発本部が、海外IT企業の事業開発速度への危機感からDX導入を進める背景を紹介しました。阿久津智紀氏は、JR東日本スタートアップ株式会社の取り組みとして、通算1,077件の事業案、108件の実証実験、51件の事業化を経て株式会社TOUCH TO GOを立ち上げた社内起業の事例を示しています。石原英貴氏は、オムロン株式会社のイノベーション推進本部(IXI)が、プロセスと人財からなる組織能力を基盤に、社内スタートアップを支える仕組みを説明しました。磯和啓雄氏は株式会社三井住友フィナンシャルグループのデジタルによる新規事業を取り上げ、金融の外側へ顧客ニーズに応えるサービスを広げる方向性を示しました。守屋実氏と権田和士氏の講演は、50以上の事業開発経験を踏まえ、新規事業の成功には再現性のある型と体制が存在するという見方を提示しています。中村亜由子氏、松本泰拓氏、鎌田和博氏のセッションは、大企業とスタートアップの協業で生じるシナジーの成功法則を実践知として扱いました。竹内友里氏、徳富大治郎氏、藤本宏樹氏は、スタートアップにとって信頼できる企業となる条件を、事業会社側の新規事業・投資活動の課題から議論しています。
全体を通じて、掲載講演では株式会社NTTドコモ、株式会社三井住友フィナンシャルグループ、富士通株式会社、ソニーグループ株式会社、株式会社ゼロワンブースター、株式会社アルファドライブ、株式会社Relicが繰り返し登場し、制度設計、事業伴走、デジタル活用、外部共創を担うプレイヤーとして位置付けられています。新規事業は、アイデアコンテストや技術導入にとどまらず、既存資産の再定義、組織変革、顧客検証、投資・撤退、スタートアップや自治体との共創を統合する経営課題として扱われる構図です。
※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。
編集者:ビズスタAI編集チーム
データソース:ビズスタ掲載中の新規事業の調査レポート関連の講演情報
日本企業のイノベーションを阻む壁をギャルマインドで解決?イノベーションを起こすために必要なコミュニケーションをテーマに社員の本音を引き出し、組織の力に変えるマネジメントを深掘りします。マネジメントや硬直化した組織風土に課題を抱え、変革の糸口を探しているリーダーに必見です。
⽇本新規事業⼤賞優勝者、西田氏、田中氏はどんな困難に遭遇し、乗り越えたのか。大企業のアセットを武器に変える「社内ハック術」、組織を動かす「新規事業リーダーの条件」など、事業を形にするための『突破術』を議論します。組織の壁に悩む新規事業担当者・責任者・事務局の方、必見です。
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新規事業は「スキル」だけで創るものではありません。最も重要なのは、なぜ自分がそれをやるのかという「意志」です。過去にヤフーで次世代リーダー育成の責任者を務め、現在は武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長としてリーダー育成の改革を牽引する伊藤羊一氏が、大企業という枠組みの中でも自分自身の人生を生きる「社内起業家」としてのあり方を提唱。会社や社会にとって新たな価値を生み出すためのマインドセットを伝授します。
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「社会課題の解決」は、今や企業の持続的な成長に必要不可欠です。しかし、新規事業として取り組もうとすると「マネタイズの壁」や「社内リソースの限界」に直面し、形骸化してしまうケースも少なくありません。本セッションでは、大企業のアセットとスタートアップの機動力・専門性を掛け合わせた共創事例を深掘りし、社会貢献の枠を超えた真のインパクトと事業的メリットを深掘りします。「社会貢献の枠を超えた新規事業をどう描くべきか」「スタートアップとの連携をどう成功に導くか」。既存事業の延長線上にはない、次世代のビジネスモデルを模索するリーダーのための実践的な道標を提示します。
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「社会課題解決」を本気のビジネスへ。自治体と企業の官民共創を事例とともに解説します。現場で直面する壁、事業化を成功させるポイントは何か、社会課題をビジネスの商機に変え、社会と経済の価値を両立させる「連携のリアル」をお届けします。